フジテレビの新しいお昼の番組「ぽかぽか」のコーナーのひとつに「日本中に知って欲しい!FNSおすすめジモTV」なるものがある。フジテレビ系列各局で放送されている人気ローカル番組を週替わりで紹介するもので、初回に取り上げられたのは、サガテレビ「どぶろっくの一物」だった。
この番組、佐賀県出身のお笑いコンビ「どぶろっく」の森慎太郎と江口直人が佐賀県内をロケでめぐり、自信を持って紹介できる一番の物や、視聴者のオンリーワンを見つける「地域活性化バラエティー」が謳い文句。ここで言う「一物」は「ナンバーワンやオンリーワンの物」を意味しているというが、そこはどぶろっくのこと、男性の局部をダブルミーニングで掛けているのは明らかだ。
地元民との会話ではお得意の下ネタをちょくちょく挟み、食レポの際には一口食べると「うまイチモツ!」とお約束のように叫ぶ。そして終盤は、その回の思い出を下ネタ混じりの歌で披露する。これがとにかく面白かった。「ぽかぽか」はどうでもいいから、「どぶろっくの一物」だけをずっと流してほしいほどだ。
思えば、爆死した前番組「ポップUP!」では、放送開始直後から木曜レギュラーの高嶋政宏が下ネタやセクシャルハラスメント発言が問題視された。番組中、佐野瑞樹アナから注意を受ける場面がちょくちょくあったものだ。
結果、委縮してしまったのか、高嶋は牙を抜かれた狼に。そもそも「変態紳士」という著書のある高嶋をブッキングしておきながら、肝心の特質を封印って、それはないだろう。
ともあれ、そんな前番組での「高嶋の下ネタ」という失敗事案がありながら、ローカル番組の紹介とはいえ、どぶろっくの番組を俎上に。が、高嶋には目くじらを立てていた視聴者も、どぶろっくの下ネタはウエルカムなムード。なんとも得なコンビだ。
彼らのイメージといえば、下ネタ全開の歌詞を、キャッチーなメロディに絶妙な譜割で乗せて、無駄にいい歌唱力で2人が熱唱する。しかも聞き手が引いてしまう一歩手前の表現で、思わずニヤリとしてしまい、最後は爆笑をかっさらうという芸だ。
このご時世、彼らのような笑いは、なにかと非難の的になりそうなもの。だが実際はというと、19年の「キングオブコント」で優勝した、病気の母を持つ農夫と神様に扮してのコントでの「大~きな~イチモツを~く~ださい~♪」の歌などは、21年「FNSラフ&ミュージック・第一夜」で、山崎育三郎・尾上松也・城田優の3人が熱唱。出演者のみならず、視聴者からも大絶賛を浴びていた。昨年大晦日の「笑って年越し!世代対決 昭和芸人 vs 平成・令和芸人」においては、徳永ゆうき、大川栄策、松崎しげるの3人を迎えて「イチモツ音頭」を熱唱。「イ~チモツ音頭で、あの娘もこの娘も~、チョ~メチョメチョメ、し~てみません~か~♪」と大盛り上がりだった。
どぶろっくの2人は、保育園の時から小学校、中学校、高校、大学までずっと同級生だったとか。こちらの勝手な想像だが、幼い頃から同じテレビの話題で盛り上がり、ゲームで遊び、やがて第二次成長期を迎えて性に目覚めた頃に、ああだこうだと笑って交わした好色話をそのままネタにしているのではないか、と。私にはそんなふうに見えて、「いやらしさ」よりも、むしろ「ほほえましさ」を感じてしまう。
その証拠といってはなんだが、どぶろっくの大ファンだという小学生の女の子、ななちゃんが登場し、意味を理解しているのか否かはわからないが、フリもしっかりつけて「イチモツ音頭」を大喜びで熱唱していた。いずれ彼女が大人になって「恥ずかしい」と思うか「誇らしい」と思うかは分からないが、少なくとも良い思い出になったのは間違いないだろう。「8時だョ!全員集合」における加藤茶の「ちょっとだけよ」と同じで、いつの時代も、子供はこういう猥褻さが大好きなのだ。
満面の笑みで「イチモツ音頭」を歌うななちゃんと、それを微笑ましく見守る両親を見て、なんと温かくて平和な時間が流れているのかと思った。ななちゃんのような子がいる限り、日本の未来はまだまだ明るい!
(堀江南)