2月11日は名将・野村克也氏の命日だった。2020年に亡くなってからすでに3年が経った。
周知の通り野村氏は、ID野球を引っ提げ、ヤクルトで監督を務めた9年間で4度のリーグ優勝、3度の日本一に輝いた。野村氏が南海時代に経験した「監督兼選手」をのちに行うことになる古田敦也氏の育ての親でもある。
YouTubeチャンネル〈プロ野球OBクラブチャンネル〉に、昨年まで西武の監督を務めた辻発彦氏と、通算2133安打で名球会入りも果たした元ヤクルトの宮本慎也氏が出演し、2人の恩師である野村氏について語り合った。その中で、ID野球について触れた辻氏はこう明かした。
「僕はあまりデータを気にして野球をやっていなかったんで。こと、自分が打つことに関しては、来た球を打つ、でしたから」
96年にヤクルトに移籍し、野村野球の経験者でもある辻氏は、「ID野球をまわりに語ることはできる」とは言うものの、「自分にはそれほどしっくりしたものではなかった」とも告白したのだ。
さらに司会者が、「令和のこの時代に、今、勝てる監督というのはお二人から見てどんな監督だと思われますか」と質問。宮本氏が、「辻さんは勝ってますからね」と水を向けると、辻氏は「やっぱり、良い選手がいっぱいいるところ(が勝てる)。結論は選手だから」と語って笑いを誘った。だが、その後で、
「(監督は選手起用や作戦などで)時には我慢も必要だし、大博打を打たないといけない時もある」
と明かしたのだった。監督としての辻氏の手腕について、野球ライターが次のように語る。
「辻氏は西武で監督を務めた6年間で2度のリーグ優勝、5度のAクラス入りを果たしています。間違いなく名監督の1人でしょう。謙遜交じりにコメントした辻氏ですが、『良い選手』を育てる手腕も『勝てる監督』には必要だったに違いありません」
野村氏はID野球で天下を獲ったが、教え子の辻氏はそれを継承することなく、独自のやり方で名監督にまで上り詰めたのである。
(所ひで/ユーチューブライター)