「なんか、麻理子先生に似ているなぁ~」
2月20日に居間に置いてある、つけっぱなしのテレビのワイドショーをチラリと見た50代の主婦A子さんは、髪が長くてふっくらとした中年の女性が映っているのを見て、思わずテレビに近づいていった。すると似ているもなにも本人であり、しかも逮捕されて裁判が始まっていたことを知り、仰天してしまった。
「だって、昨年暮れに先生と電話で話をしていましたし、今年の3月には六甲にある麻理子先生の別荘で会う約束になっていたんですから。逮捕された報道もなかったし、まさかこんなことになっているなんて…」
昨年暮れの12月27日に、占い師の川村麻理子被告は兵庫県芦屋市の自宅マンションに全国から25人の支援者を集めて「運気を上げる」と称したイベントを開催した。この時に配布した「大麻クッキー」を食べた40代の女性が体調不良を訴え、病院に搬送。女性の体内からはまさにその成分が検出されたのである。女性が「イベントで緑色のクッキーを食べた」と話したことなどから、警察が関係先を家宅捜査すると、川村被告の自宅から緑色のクッキー68個と大麻草が見つかり、川村被告は逮捕された。
また、クッキーを作って川村被告に送ったとして、京都市の仲居業・池上ひろみ被告も逮捕されている。
2月20日の初公判で、検察の冒頭陳述によると、川村被告は短大卒業後に占い師になった。夫はカナダ人で、子供はすでに独立している。約20年前に初めて大麻を使用し、10年ほど前からはカナダに渡航して断続的に、そして3年ほど前からは友人を介して、週1回ほどの頻度で使用していた。
冒頭で紹介したA子さんは、母親の時代から川村被告と付き合いがあり、その期間は40年にもなる。
「麻理子先生には霊感があるというウワサがあり、相談事にアドバイスをしていたのです。宗教ではありませんが、口コミによる評判で、いわゆるお金持ちの方々が通っていました。最初、麻理子先生は帝塚山のマンションで相談を受けていました」
東の田園調布、西の帝塚山と評されるほどの高級住宅地。川村被告はそこで生まれ育った『お嬢様』だった。多額の遺産が入ったということで、暮らしにはまったく困っていなかったようで、数人のスタッフも雇っていた。先のA子さんが証言する。
「調度品として、驚くほどの高級品が並んでいました。帝塚山時代に日本の方と結婚して男の子を産んだのですが、離婚して年下のカナダ人男性と再婚すると、手狭だった帝塚山から芦屋のマンションに引っ越したんです。自宅には高級外車が3台あり、相変わらず余裕の暮らしをエンジョイしているように見えました。相談料は基本、1時間5万円ですが、客によっては数十万円の時もあるし、極端な話、1万円のケースもあったようです。有名な占い師の多くは『○○しなさい、しなきゃダメよ』『私の言う通りにしないと大変なことになるわよ』などと上から目線の命令口調が多いのですが、麻理子先生は決してそうではありません。『○○した方がいいわね』という調子で、とにかく優しいし、声がかわいいというのが特徴でしょうか。もちろん大麻が話題になったことはありませんし、先生自身が常習者だったというのも信じられません」
占いに来た相談者に問題のクッキーを食べさせたのが何年前からだったのか、それは分かっていない。また、一回食べたからといって常習性が出るのかも不明だ。
川村被告はたびたび、夫の出身地カナダに渡航しているが、カナダでは大麻が合法的な州もあり、欧州の一部やタイでも合法化されている。そのクッキーを食べると、酔ったような状態になって肝臓に負担がかかり、人によっては吐き気や嘔吐、あるいは神経障害として痙攣などが起こることがある。警察は薬物作用を占いに悪用していた可能性もあるとみて、捜査していた。
小さい時からお嬢様育ちの苦労知らずで、霊感が強い特別の存在。周囲がチヤホヤしてくれる川村被告にはこれといった不満がなさそうだが、
「私の知り合いの麻理子先生の相談者が先生と昨年食事をした際に『年を取ると霊感が鈍ってくるのよ』とこぼしたらしいんです。まさか薬物の力を得て、支援者たちが離れないように画策していたのでしょうか」(前出・A子さん)
占いに頼らない強いメンタルを持つことが肝要ではないか。