コロナ禍も落ち着いてきたかと思っていたら、何やら物騒な世の中になっていたものだ。強盗事件の多発ばかりではなく、違法薬物の逮捕者までもが急増しているというのである。
傍聴を続ける裁判ウォッチャーが語る。
「今年に入ってから、大麻取締法違反の裁判が相次いでいます。昨年6月に、タイで大麻の使用が解禁された影響も大きいのでしょうか。ある20代の被告は旅行先のバンコクで大麻の味を覚え、帰国後もSNSなどを通じて購入。裁判では『誰でも簡単に手に入る』と悪びれることなく証言していましたが、以前に比べて国内での流通量が明らかに増えているのです」
容易に手に入れ、安易に手を出す。その入口も世相を反映しているようだ。
警察関係者が話す。
「違法薬物は運び屋や国際郵便で海外から持ち込まれるケースが大半でしたが、現在の大麻流行に関しては国内での栽培が横行している結果とも言える。コロナ禍で密輸量が激減した際、自家生産への切り替えが進んだのです。栽培方法に関しても、かなり進化したと見られている。かつては1株とか2株とか、自分で楽しむ分だけを育てていたのですが、営利目的で大量生産に手を染める輩が後を絶たないのですから」
まさに需要と供給のバランスが変化し、負の連鎖に陥っているのである。司法記者は語る。
「昨年に摘発されたケースでは、一軒家を大麻工場に改築して1500株以上の大麻草を育てていた。末端価格は5億円以上。顧客は全国にいて、仲買人を通して宅急便で配送していたと言います。注目すべきはその栽培方法です。オランダから高品質の種子を取り寄せ、冬季でも育つように、工場内には温室ヒーターをいくつも設置していた。1カ月の電気代は20万円以上かかったそうですが、それでも大きな利益をあげていたんです」
いやはや、もはや本職のヤクザ顔負けだ。裏社会ライターが解説する。
「かつて大麻の違法栽培といえば、押し入れにアルミシートを敷き詰めて、ハロゲン電球で温めるような原始的なものがほとんどでした。しかし最近では海外からノウハウを仕入れて、品評会に出品できるような代物まで生産されている。アメリカ製の全自動栽培ボックスを悪用するケースも増えていますね。給水や肥料の投入は全てAIが管理してくれることで“素人”でも手を出しやすくなった面もあるようですが‥‥」
進化したのは何なのか、もはや呆れるばかりの実態である。