放送法が定める「政治的公平」の解釈をめぐって、立憲民主党議員が公表した文書について、NHKが積極姿勢に転じている。NHK内部の関係者は「あのOBの圧力ですよ」と語る。
あのOBとは、立憲民主党の安住淳国対委員長のことだ。テレビ朝日「報道ステーション」キャスターの大越健介氏や大阪放送局長の小池英夫氏とNHK同期入社で、その後に国会議員に転じたが、これまでもたびたび古巣の報道に注文をつけてきた人物である。
NHKは安住氏の発言として「安倍政治の負の遺産のひとつが報道介入で、それを端的に示した例だ。高市(早苗)大臣は捏造だと言い張り、議員辞職にまで言及している。事実とわかった以上、責任を取るべきだ」と伝えた。
先のNHK関係者によると、当の安住氏はNHK政治部の後輩に「『ニュースウオッチ9』に入れろ!」と具体的な番組名を挙げて圧力をかけているという。
安住氏の報道圧力はこれが初めてではないことは、本人も認めている。安住氏は3月8日の党会合で、総務省文書について、次のように語った。
「ああいうことが起きてから、日本の政治報道番組はおかしくなった。真珠会社と同じ名前の男とか。これ以上言うと、私が壁新聞問題になっちゃうけど」
「真珠会社と同じ名前の男」とは、政治ジャーナリストでしばしば民放テレビ番組に出演する田崎史郎氏を指す。「スシロー」とも呼ばれている。
「壁新聞問題」とは2020年2月、国会質疑を報じた新聞各紙に「くず0点」「出入り禁止」などと落書きし、国会内の立憲民主党のドアに貼り出した件を指す。前出のNHK関係者は、アキレ顔で言う。
「報道圧力を批判する人が圧力をかけているという変な構図を、誰もおかしいと思わないのでしょうか」
まさしくその通り。天にツバする行為なのである。