ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で侍ジャパンが勝ち続けるために「目標は世界一です。非情だと思われるくらい、優しさは完全に消し去る」と、栗山英樹監督は断言した。短期決戦ではまさしく「先手采配」が大きなポイントとなろう。
長い日本プロ野球史の中で、国立大出身、そして大学教授のキャリアがある監督経験者は彼だけだ。現役時代は大卒後、社会人野球(朝日生命)に内定。両親からは教員になりなさいと言われ続けてきたが、「プロになりたい」と聞く耳を持たなかった。
しかし、その後に受けた西武と大洋(現DeNA)の入団テストは不合格。ようやくプロ入りが決まったヤクルトでも、当初は全く戦力にならなかった。
そんな中、スイッチヒッターへの転向を勧めた若松勉氏、さらに「組織はリーダーの力量以上には伸びない」の名言を残した野村克也氏ほか、多くのOBから薫陶を受けてきた。
そして栗山監督自身、「僕はあの人のマニアです」とまで公言しているのが、巨人・原辰徳監督だ。日本ハム時代も、監督としての振る舞いや采配で、その背中を追いかけてきた。
前回、世界一になったWBC09年大会で指揮を執った原監督の野球は、仰天采配の連続だった。
大会期間中に不振が続いたイチローの起用を貫き、ダルビッシュ有の抑え起用や、セオリー度外視の攻め手で頂点にたどり着いた。
栗山監督も16年シーズンに、不動の4番だった中田翔に突然、代打を送ったり、クリーンナップが定位置だった大谷翔平をクライマックスシリーズで初めて「1番」に起用したり。これがズバリ当たり、日本ハムを10年ぶりの日本一へと導いている。
はたしてWBC本戦では、マニアを自任する原監督流の「仰天采配」が見られるか。
(小田龍司)