いよいよ3月13日から「ノーマスク」が解禁された。とはいえ、政府は「一斉にマスクを外せ」と言っているのではない。あくまで「着脱は個人の判断に任せる」というものである。
同日早朝、岸田文雄総理はノーマスクで颯爽と官邸に入った。そして待ち受けた記者団に、
「マスクの着脱は個人の判断に委ねることとなるが、個人の着脱を強制するものではない」
と言い放った。国会答弁以上によくわからないひと言である。要は「国民に丸投げ」としか聞こえない。
そんなわけで、首都圏における通勤ラッシュ時、電車の中は前日と変わらず、乗客のほぼ100%がマスクを着用していた。政府が満員電車では着用を推奨しているので、これは当然の結果なのかもしれない。
しかし、空いている時間帯でも同じだった。正午頃の都営地下鉄に都心部から乗ってみたのだが、1車両にノーマスク乗客は中年女性1人だけ。政府は三密を避け、高齢者施設や病院など重症化リスクの高い人が多い場所ではマスク着用を推奨している。空いている電車は外してもOKなのだが、社会部記者が言う。
「これまでマスクを着けてきた人の多くは、新型コロナの感染防止という科学的根拠があるからというより、他の人が着用しているからという消極的な理由が圧倒的多数でした。今はマスクを外す人が少ない中で、まだノーマスクでは白い目で見られそうだと思っているのでしょう。そのせいで、マスクを外したくても外せないのが実状です」
個人の判断も、激しい同調圧力の前には形なしである。
岸田総理の丸投げで無用なストレスを押しつけられたせいか、早くもトラブルが起きている。都内勤務の40代会社員は、こんな場面に遭遇したという。
「我が社の喫煙所は入居しているビル2階にあるのですが、そこで昼飯時に口論が起きていました。13日から人数制限を撤廃したのですが、毎日使っている私らは、混んでいると喫煙所入り口で並びます。でも1階と地下1階にある飲食店の客にしてみると『入れるのに、なんで並ぶ?』となる。そのせいで、列の後方から『早く入れよ!』と怒鳴り声が飛んで…」
ストレス列島のトラブルは、しばらく続きそうだ。