2月2日にJALとANAの大手航空2社が発表した2022年4~12月期の連結決算は、両社とも純損益が3年ぶりに黒字となった。
「全国旅行支援」の延長もあり、旅行業界は盛り上がっているようなのだが、その一方で悲鳴を上げているのがホテル業界だという。いや、決して「嬉しい悲鳴」ではない。
ホテルの仕事は24時間体制ということもあって、従業員への負担が大きく、離職率はあらゆる業界の中でもトップクラスといわれている。もともとそんな状況だったところに追い打ちをかけたのが、皮肉なことに旅行支援だった。急激な需要の伸びに深刻な人手不足に陥ってしまったのだ。
その結果、サービスが十分に行き届かず、宿泊客から混乱の声が上がっているのである。大阪の印刷会社に勤める男性が、出張で東京を訪れた時の体験を語った。
「チェックインの時に、『コロナ禍なので3日に1度しか清掃ができません』と言われたんです。自粛中ならわかるけど、すでにある程度は緩和されているのになぜ、と思いました。人手不足は仕方ないと思いますが、3泊したので衛生面が気になりましたね」
今でも、清掃の回数を減らさざるを得ないホテルは多いようで、ベッドメイキングはせずにタオルのみの交換、ということもあるという。別の男性からはこんな声も聞かれた。
「清掃が毎日できないとのことで、タオル類は部屋の外に置いていただければ新しいものと交換します、と言われたんです。なので、午後に外出するときにタオルを部屋に置いていたのですが、帰ってきてもそのまま。フロントに行くと深夜なので誰もいなくて…。呼び出しベルを押したら慌てて出てきてタオルを交換してくれたのですが、なんとも複雑な気持ちになりましたね」
また、全国旅行支援で関西方面に旅行したという女性からはこんな不安の声も。
「スマホで地域共通クーポンを受け取るよう言われたのですが、スタッフがあたふたしながら説明するんです。おそらく新人だと思うのですが、仕組みをきちんと理解していないようで少し心配になりました」
旅行支援によって客足が急増したことで、急遽新規スタッフを募集したり、それまで接客に携わらないスタッフが接客業務に加わったというホテルも増えているという。そのため、スタッフも勝手がわからず混乱が生じているようだ。
今後、海外からの客も増え、さらに多忙になると見られているホテル業界。どんな理由があろうと、訪れる客への対応は、くれぐれも万全にして欲しいものだ。