周知のように、国が新型コロナ対策の一環として推奨してきた「マスク着用」が、この3月13日から「個人の判断」に委ねられている。
目下、マスク着用のまま様子を見ている人が多いが、感染者数や死者数の少ない状況が今後も続くようであれば、ノーマスクはやがて日常の風景になっていくだろう。
だが、ルール緩和による「脱マスク」には、意外な盲点と落とし穴が潜んでいる。そのカギを握るのが「ウイルス暴露量」だ。
新型コロナに限ったことではないが、ウイルスが体内に侵入した際、「重症化」も含めて「発症」に至るか否かは、ウイルスの「暴露量(人体がウイルスにさらされる量)」と「増殖量(ウイルスが体内で増殖する量)」にかかっている。
例えば、ウイルスが体内に侵入しても、暴露量そのものが少なければ、多くの場合、人体の免疫システムがウイルスを駆逐し、いわゆる「無症状」で終わる。同様に、発症に至ったとしても、ウイルスの暴露量が少なければ、大半は「軽症」で終わるのだ。
ところがウイルスの暴露量が多い場合は、免疫システムによるウイルス退治が「多勢に無勢」で追いつかず、侵入したウイルスが体内で大増殖することで「重症化」あるいは「死亡」に至る危険性が高まる。
また、免疫システムに異常があり、免疫力が非常に弱い場合は、たとえ暴露量が少なかったとしても、ウイルスの体内大増殖によって、やはり重症化や死亡のリスクは高まるとされているのだ。
そして、この「ウイルス暴露量」を大きく左右すると考えられているのが「マスク」なのである。ウイルス学の専門家も、次のように指摘している。
「脱マスクが進めば、当然、暴露量は増加します。密閉に近い空間なら、なおさらのことです。例えば仲間と車でドライブした際、無症状の感染者が1人でもいれば、車内の空気は1時間以内にウイルスだらけとなります。今後、脱マスクがあたり前となれば、これまで無症状で済んでいた人の中から、中等症や重症も含めて、多くの発症者が出てくるのは確実と言っていいでしょう。この点は若者といえども、例外ではありません」
しかも、マスクはウイルスの飛散防止には一定の効果が期待できるものの、ウイルスの吸引防止にはそれほどの効果はないとされている。
したがって、自分がマスク着用で防衛しても、周囲の大半がノーマスクであれば、ウイルスの暴露は避けられないのである。