7月10日、神奈川県内で「怪奇現象」が発生した。2021年に猛威を振るった新型コロナ「デルタ株」が今年5月に神奈川県内の下水道から検出されたと公表されたのだ。
デルタ株といえば、60歳以下の死亡率が現行株やオミクロン株で0.01%以下なのに対し、0.08%と重症化しやすいと言われてきた変異株だ。2022年6月頃から日本国内では、現行の「ただの風邪症状」に近いオミクロン株に置き換わっている。
よほど「新型コロナ利権」でオイシイ思いをしたのか、新型コロナの恐怖を再び煽ろうとする医師を中心に、神奈川でデルタ株が出たとのSNS投稿が相次ぎ、「#デルタ株」が2年ぶりにツイッターのトレンド入りを果たした。
ところが半日も経たずに「デルタ株検出」の検査結果は削除された。神奈川県の公式見解は7月10日15時現在、出ていないが、
【1】試験で使うデルタ株の遺伝子が、下水道から採った検体に紛れた検査ミス
【2】オミクロン株など他の変異株だったのに、デルタ株と入力したミス
いずれかの人為的なミスによる「誤診」を、コッソリ削除したと考えられるのだ。
マイナンバー制度でも入力ミスが問題になっているが、人の手を介する以上、何かしらのミスは起きる。新型コロナの検査なんて、所詮はその程度。今の検査試薬ではいつ頃に感染したかまではわからず、3カ月以上前に感染していても、検査キットで陽性が出てしまう。
特に感染症法の分類がインフルエンザウイルスと同じ5類になった今、新型コロナの検査結果やウイルスの種類に一喜一憂する必要などない。むしろ別のウイルスに感染しているかもしれないのに、過去に新型ウイルスに感染していた「偽陽性」が出て、誤診を招く弊害の方が大きい。
問題なのは、患者の不安を払拭すべき医師や一部の神経過敏な「コロナ脳」の人たちが「デルタ株の亡霊」まで持ち出して、今も恐怖を煽っているということだ。ウイルスや怨霊より、人間の邪心の方が恐ろしい。
全国で4年ぶりにお祭りや花火大会が開催され、今月末には行動制限のない夏休みが始まる。日常生活に戻るのが面白くない医師や孤独なネットユーザーは、どこにでもいる。デマや不確実な検査結果に振り回されず、休養と水分をとって猛暑を乗り切ろう。
(那須優子/医療ジャーナリスト)