岸田文雄首相は3月16日夜、来日した韓国の尹錫悦大統領と銀座の店をはしごした。1軒目はすき焼きなどの日本料理店「吉澤」で食事、2軒目は尹大統領がかつて来日した際に食べた味が忘れられないと、洋食店「煉瓦亭」でビールと共にオムライスを味わった。両首脳は文在寅前政権下で「戦後最悪」と言われる日韓関係の改善をアピールした。
夕食会の前に行われた会談で、両首脳は「シャトル外交」の復活を宣言したが、日本政府関係者が明かすには、
「次回、韓国での首脳会談で発表する内容も、すでに内々に合意しているといいます。それは軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の正常化と、輸出手続き簡略化などの優遇措置の対象億となる『グループA(旧ホワイト国)』への韓国の再指定です」
これが事実なら、まさに「オムライスの密約」とも言えるものだろう。
GSOMIAは日韓で北朝鮮のミサイル発射に関する情報を融通する仕組みだが、文在寅政権時の2019年、韓国側が一方的に破棄を通告した。アメリカの反発を受けて韓国側は破棄手続きを凍結していたが、正常化には程遠い状況が続いている。
一方、日本側は19年に、韓国をホワイト国から除外した。今回、半導体関連材料3品目の輸出管理の厳格化措置を緩和すると発表したが、ホワイト国への再指定はパブリックコメントなどを実施する必要があるため間に合わず、「再指定に関する対話は継続する」と発表するにとどまった。先の政府関係者によれば、GSOMIAの正常化とバーターで再指定することは合意しているという。
対北朝鮮をにらみ、安全保障分野を中心に連携を強化することは日韓双方にとってプラスにはなるが、韓国側には野党を中心に、日本への接近を喜ばない勢力も根強い。前出の日本政府関係者は、
「これが尹政権の次の政権まで続くかは、まったくわからない」
と、先行きの不透明ぶりを懸念している。