日中、日韓ともに首脳会談ができない状態が1年以上続いています。2つの隣国で同時に、というのは異例のこと。何しろ、韓国の尹炳世〈ユン・ビョンセ〉外相は「(安倍政権は)北東アジアの平和と協力の大きな障害物になっている」とまで言って批判していますから。
靖国参拝自体は、日本国内でも支持する人もそうでない人もいるわけで、完全に正しいとも間違っているとも言えないと思います。ただ、参拝のタイミングとして、いいものではなかったと思いますね。
では、いいタイミングというはあるのか。それは(自民党総裁の)退任直前です。事実、菅義偉官房長官や秘書官は安倍総理に「行きたい気持ちはわかる。もし行くなら退任直前がいい」と進言し、だいぶ止めたようです。いくら(中国、韓国との)関係がすでに悪化していたからといっても、そこへさらに重石をつけて水に沈めることはないのでは、ということです。
個人的には、参拝する気持ちはわからなくはありません。が、15年9月にはいったん、任期が切れます。そこで参拝すれば、反発も今回よりは少なかったでしょう。時期を考えるべきだった、ということです。
結果、どういう事態に陥ったか。例えば中国には「日本は軍国主義に戻ろうとしている」という言い訳を与えることになりました。対抗策として軍備を増強したり、中国が勝手に決めた航空識別圏をさらに正当化してくるなどの強硬姿勢をとる口実となるのです。
そして現職総理としては、06年の小泉純一郎氏以来、7年ぶりの参拝でした。あの時は、「自分の信念で突っ走ってしまう変わり者」のイメージが小泉氏にありましたが、今回は違う。中国、韓国は「安倍総理は強いリーダーを目指している。その強いリーダー、実力を持った保守本流の政治家が、我々の目をはばかることなく堂々と参拝した」という、半ば恐怖感すら持ちました。それに対する行動は、参拝後に中国船3隻が尖閣諸島周辺で日本の領海に侵入したり、中国機も尖閣諸島周辺を飛行するといったものに表れています。
実は今、在日中国人の間では、こんな噂が急速に広まっています。「いよいよ中国が日本を攻撃、戦争をする準備に入った。ミサイルを日本に向けている。日本にいる俺たちは見捨てられたんだ!」と。