12年ぶりに再会された日韓シャトル外交の最終盤に、岸田文雄総理が口にした「媚韓アドリブ声明」が、日本国内で大きな波紋を広げている。
物議を醸しているのは、韓国で行われた尹錫悦大統領との首脳会談(5月7日)後の記者会見で、元徴用工問題をはじめとする過去の日韓関係について、岸田総理が神妙な面持ちで開陳した次のくだりである。
「当時、厳しい環境のもとで多数の方々(日本で就労していた韓国人労働者ら)が大変苦しい、悲しい思いをされたことに心が痛む思いです」
心が痛む思い──。この声明については、岸田総理が首脳会談の席上でも、尹大統領をはじめとする韓国側の関係者らに伝えていたことを、尹大統領が明かしている。
韓国国内では、この岸田声明を好意的に受け止める向きもある一方で、案の定、「明確な謝罪がなく、期待外れ」「韓日間の溝を埋めるには不十分」などと批判の声が噴出する事態に。永田町や霞が関からは「それ見たことか!」の声が上がっている。
「実は『心が痛む思い』を含むくだりは、岸田総理の一存によるものです。要は総理のアドリブ。外務省は一切、関知していない。そもそも、外務省は交渉相手に媚びるようなスピーチ原稿など作りません。外務省の担当幹部らは、総理が韓国に足元を見られかねない声明を口にしたことに、正直、驚きを隠せない様子でした」(外務省関係者)
同様に、自民党タカ派の有力議員も、次のように指摘するのだ。
「過去の日韓問題を巡る交渉では、日本は何度も煮え湯を飲まされてきた。事実、今回も韓国側に言質を与えてしまったところで早速、期待外れだの、不十分だのと、イチャモンをつけられている。そもそも、韓国との外交交渉においては、友好ムードはすべからく砂上の楼閣で、政権が代わればまたもや元の木阿弥、というのが通り相場なんだから」
岸田派内でも「バカが付くほどのお人好し」と評されている岸田総理。今回もまた、その「ノーテンキぶり」を世に晒してしまったということなのである。