政権末期ぶりではお隣り、韓国の尹錫悦大統領(61)が一歩独走している。
国際部記者が説明する。
「今年5月に就任しましたが、元検事総長ながら政治経験ゼロだけに、当初から支持率は50%程度と低かった。むしろ、その美人妻・金建希夫人(50)のほうが、経歴詐称や整形疑惑などで批判を浴びつつも、注目度が高かった」
実際、ハネムーン期間と言われる3カ月を過ぎた頃から徐々に支持率は低下し始めた。8月のソウル市外の洪水で30%を切り、9月には米ニューヨークでバイデン大統領との面会後に「この野郎ども(米議会)が承認しなければバイデンは赤っ恥だ」という暴言をカメラに拾われてしまったことが拍車をかけた。「米国侮辱だ」として過去最低の24%まで支持率を下げてしまったのである。
その後、一時は30%まで回復したが、再び人気を急落させたのが、10月末の死者157人の大惨事となった梨泰院での雑踏事故だった。
「この日、梨泰院に配備された機動隊がわずか20人だったことが明らかになったが、警察は当日、デモのために4000人を配備していた。以前はハロウィンに180人態勢で警備を敷いていただけに尹政権を批判する声が上がった」(国際部記者)
しかも、当夜に行われていたのは、ほかならぬ大統領夫妻を猛批判するデモだったというのだ。
今回の雑踏事故で比較されるのが8年前の「セウォル号」沈没事故だ。高校生など300人以上が亡くなる大惨事だったが、事故直後に朴槿恵元大統領(70)と連絡がつかず「空白の7時間」と政権批判を浴びることに。「今回はこの教訓が生かされた」と語るのは、東京新聞・編集委員の五味洋治氏である。
「朴槿恵と同じ轍を踏まないように素早い動きでした。事故後は現場を視察し、金夫人と共に遺族を弔問している。また直後に1週間の『国家哀悼週間』を設けて騒ぎがムダに広がることを抑制した。さらに所管の警察署を家宅捜索したり、通報への対応が不十分だった警察を叱責する映像を公開するなど、自らをアピールすることも怠らなかった」
元検事総長ならではの速攻辣腕ぶりということか。
しかし、それでも尹批判は止まない。事故1週間後の5日、ソウル市街では再び数万人のデモ行進が行われた。参加者からは「退陣こそが追悼だ」という大合唱が起こり、尹大統領バッシングは収まりそうもない。
「今後、事故直後に連絡が取れなかった警察庁長官などには、厳罰が処されるはずです。とはいえ、責任の所在を警察に求めるだけでは、国民の理解は得られないでしょう」(国際部記者)
難局での舵取りを失敗すれば国民から総スカンを食らうのはどの国でも同じことだ。