フロリダで行われたWBC準決勝メキシコ戦で先発した佐々木朗希は、初回にいきなり今大会自己最速タイの164キロをマークするなど、160キロ超えを連発。2回一死一塁から、6番のウリアス(ブリュワーズ)の痛烈なライナーを腹部に受けて球場は騒然としたが、それでも「大丈夫」とマウンドに立ち続けた。
4回5安打3失点で降板することになったが、内容は悪くなかった。160キロ台のストレートに、フォークもズバズバと決まった。しかし4回二死からのポテンヒット2本と、その後、甘く入ったフォークボールを左中間スタンドへ放り込まれる先制3ランを献上してしまった。「配球は間違っていなかった。投げ切れなかったところは反省点かな」と佐々木は悔しそうだったが、メキシコのヒル監督は「彼がメジャーに来れば、とんでもないスターになるだろう」と太鼓判を押した。WBC公式ツイッターも「102MPH(約164キロ) from Roki Sasaki!」と、インパクト十分の登板を伝えた。
「佐々木にとってはアンラッキーな展開でした。ただ、最初から飛ばしていましたから、疲れていたんじゃないですかね」(スポーツ紙記者)
試合後の会見で「近い将来、メジャー移籍の考えはあるのか」とアメリカの記者に聞かれた佐々木は「時期より、まずは日本でしっかりプレーして、その先に見えてくると思う」と返した。
「大船渡高時代の3年夏、岩手大会準決勝から連投になるため、決勝戦での登板を回避したことが大論争に発展しました。監督への批判の声が上がったのは確かですが、あの時に無理をさせれば故障の可能性があったのも事実です。佐々木自身は出たかったはずですが、それでもベンチで大きな声を出していたのが印象的でした。WBCでの佐々木の活躍を見ると、無理をさせないで正解だった、という気がします」(前出・スポーツ紙記者)
この年、韓国で行われたU-18W杯では、右手にマメを作って1イニングに登板したのみ。プロ入り後も体力不足が指摘されるなどした。
しかし、ロッテに入って2年。球団を挙げて体作りに取り組んできた成果が表れ、今回のWBCでひと皮もふた皮も剥けた印象だ。
米国お披露目となったこの日の快投で、メジャーリーグの評価はますます高まったようだ。あとは同じ故郷の先輩の大谷翔平、そして菊池雄星との「岩手メジャーリーガートリオ」が誕生するのが待ち遠しい限りである。