佐々木にはピッチャーとして際立った理想的な特徴がある。スポーツライターが解説する。
「佐々木はフォアボールで崩れることがありません。今季55イニング投げた段階で、四球はたった8個(死球4個、5月21日現在)。例えば、投手・大谷はコントロールに難があり、相手チームは球数を投げさせて、100球に到達させることで攻略が図れる。ところが佐々木の場合は、簡単にツーストライクを取るんです。そして最後に低めのストライクゾーンから落ちる150キロ近いフォークを投げられたら、お手上げ。だから追い込まれる前に打たなければならず、完全試合をやられたオリックスがその後の対戦でも早打ちなのはそのためです」
四球から崩れて3回をもたないこともあるピッチャー・大谷と比べ、すでに投手としては佐々木のほうが上回っているようにも見える。
「佐々木は160キロのスピードボールを全て制球する能力がある。佐々木が狙ったところに投げれば、大谷でも打てないでしょう」(スポーツライター)
そろそろ一矢報いたい大谷の3打席目。初球はやはりストレート。キャッチャーの構えは内角ギリギリだが、これが真ん中高めに抜け、大谷が素早く反応。3打席目にして、160キロのストレートを捉える。打球はドン詰まりながら、ライト前にポテンと落ちてヒットとなった。
「キャッチャーの松川が強気のリードで佐々木にストレートを要求しましたが、ボールが高めに抜けてしまった。ヘッドスピードの速い大谷のバットにボールが当たってセカンドの頭を越えましたね」(内藤氏)
いわゆる“失投”を逃さない大谷らしいバッティングだ。佐々木の失投パターンは2つあるという。
「右バッターとの対戦時に、キャッチャーが外角に構えているのに、シュート回転して真ん中に入ることがあります。それは左バッターの大谷に対しては逃げていくボールとなり問題はないでしょう。ただし、カウントを取りにいったフォークが高く浮くケースは危ない。大谷からすれば、半速球の変化球、高めの球をどう捉えるかにかかってくるでしょう」(スポーツ紙デスク)
迎えた4打席目。前対戦でヒットを打たれた佐々木が気合いを入れ直す。渾身の直球で簡単にツーストライクに追い込んだ。そして3球目。力勝負にこだわりすぎて力んだか、選択した球種・ストレートが真ん中に。それを大谷が豪快なアッパースイングで捉えた。打球はグングン伸びて、ライトスタンドへ飛び込むホームラン! 実況席からは「イッツ、ショータイム! オオタニサン、スゴイ。キュンデス」という声が響き渡る。
「ストレート中心の配球という条件付きならば、大谷が打つ確率が上がります。ホームランも出るでしょう」(松永氏)
実際に大谷は、昨季の46ホーマーの9割はピッチャーの失投を仕留めている。100%ストレートを待って、甘い球をミスショットしなければ大谷の勝機は高まるだろう。
また今回の5打席対戦では、完全試合の3打席とは状況が異なり、フォークで先にも触れたような失投を招く恐れがある。
「これまで100球前後で交代している佐々木は、120~130球投げるような状況になったらどうするのかというのが大きな課題です。好打者を相手にピッチングを続けて後半に入れば、ボールを挟む指の力も当然弱くなってくる。伝家の宝刀・フォークボールといえども、前半と同じ鋭い落ち方をするかはわかりません」(松永氏)
高校時代には岩手県大会決勝で、将来を見据えた監督の方針により登板を回避。その後、プロ入団後も長らく2軍戦ですら投げることがなかった佐々木。当然、球数制限を超えたピッチングは未知の領域となるだろう。