今大会で一番株を上げた選手と言えば──。招集に否定的だったうるさ型のOBを沈黙させる活躍を見せた「アメリカの侍」を深掘りする。
侍ジャパンの1番打者、ラーズ・ヌートバーは、もはや日本の全野球ファンが愛する存在となった。
メジャーリーグ事情に詳しいスポーツライター・友成那智氏が語る。
「カージナルス同僚のトミー・エドマン(27)は韓国代表でしたが、大会が始まるまでオールスター選手のエドマンのほうが格上と見られていました。ところがフタを開けたら活躍したのはヌートバー。アメリカのファンからは驚きの声が上がっています」
ヌートバーは昨シーズンが開幕した時点で、カージナルスの「4人目の外野手」に過ぎなかった。だが、8月にゴールドグラブ賞外野手のハリソン・ベイダー(28)がヤンキースにトレードされると、巡ってきたチャンスをモノにし、右翼レギュラーに昇格したのだ。
「昨季は最終打率が2割2分8厘でしたが、後半は2割7分を超え、出塁率と長打率を足して計算するOPSも・969と高水準。肩も強く守備率も高い、今季のゴールドグラブ賞候補です」(前出・友成氏)
日本で人気爆発した要素のひとつに、ヒットの際に塁上で披露する「ペッパーミルパフォーマンス」がある。
「メジャーでよくある『セレブレーション』というチームを盛り上げるためのパフォーマンスで、レギュラー昇格したヌートバーがカージナルスに持ち込んで定番となったものです。ペッパーミルでコショウを挽くように『身を粉にして粘り強く戦う』という意味があるとか。侍ジャパンにチームパフォーマンスがないか大谷に尋ねた時に、『エンゼルスには特にないから、カージナルスのをやってよ』と言われ、やることにしたそうです。大谷が率先して実行することで、代表チーム内でも大流行しました」(スポーツ紙デスク)
日本人選手よりも「チームの和」を重視し、献身的なプレーを見せる姿勢は、日本人の母親・久美子さんに学んだものだという。
「ヌートバーの父親はアメリカの名門・カリフォルニア工科大学出身で、語学留学に来ていた久美子さんと知り合いその後、日本で結婚。日本で生まれた姉もアメリカで大学院にまで進んだエリート一家です。選球眼が良く、野球IQの高いプレースタイルの秘密はそこにあるのかもしれません。ちなみに、10年以上付き合っているというヌートバーの彼女も医学生です」(MLB担当記者)
取材で「日本代表のユニフォームを着るだけで涙が出てくるよ」と日本愛を語るヌートバー。将来的には日本球界でハッスルプレーをぜひ!