3月に開幕する「第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)」。14年ぶりの世界一奪還に向け、大物メジャーリーガーが続々と参戦を表明。「史上最強」との呼び声も高いが、思わぬ落とし穴が──。
去る1月6日、栗山英樹監督(61)は12名の一次メンバーを先行発表。村上宗隆(22)、山本由伸(24)ら9名の国内組に加え、かねてから参加を表明していた大谷翔平(28)、ダルビッシュ有(36)、鈴木誠也(28)のメジャー組3人が名を連ねた。
マリナーズ(当時、以下同)のイチロー(49)、レッドソックスの松坂大輔(42)ら日本人メジャーを擁してV2を成し遂げた09年の第2回大会の再現となるか。期待が膨らむ中、スポーツ紙デスクはこんな不安を口にする。
「大谷らメジャー組が日本代表としてグラウンドに立つのは間違いない。しかし、現時点では本人と栗山監督が意思を発信しているにすぎません。シーズン前の出場となれば、各所属球団を納得させなくてはいけないはずです」
09年の大会前には、キャンプ地のサンマリンスタジアム宮崎に7日間で24万人以上の観客が詰めかけ、イチローがレーザービームのパフォーマンスで盛り上げる一幕もあったが、
「MLBや球団にとって選手は所有物。2月17日からは強化合宿、さらには25日からはソフトバンク、中日といった国内球団との強化試合が組まれていますが、メジャーの所属球団がどこまで参加を容認するかは、いまだ不透明な部分も多いのです」(前出・スポーツ紙デスク)
たとえ本選への参加が認められたとしても、事前のフル参戦に黄色信号が灯りそうなのだ。
「MLBは各選手の拘束料も要求してきます。3月からしか認めていない拘束を2月からなどとすればなおさら。各球団とも吹っかけてきますから、各国代表のロースターを巡って水面下でモメているようです」(在米ジャーナリスト)
さらには高額な保険料の問題も浮上する。
「WBCの影響で、その後のレギュラーシーズンに支障をきたしては一大事。そのため少なくともアメリカ代表は大会期間中、何かあった時のために所属球団の了承を得て保険に入るのです。この保険料が超高額で、財政難のNPB(日本野球機構)が負担できるわけがない。推定年俸25億円のダルビッシュ、40億円の大谷など、チームの主力メンバーの保証をどう考えているのか。先行きが見えないからこそ、一転して不参加というシナリオまで危惧されているのです」(メジャー担当記者)
実は、WBCの本選はおろか宮崎合宿や日本の球団との強化試合についても、いまだ大谷を含むメジャー選手の参加は明言されていない。それもそのはず、WBCの出場には、出場選手の保険契約が参加条件とされており、いまだ保険について慎重に審査が行われている最中だというのだ。つまりこの高額な保険契約が結ばれない限り、選手本人の意思を問わず、WBC関連のイベントへの出場はできない契約となっているというから、審査結果いかんでは、メジャー選手全員がWBC不参加の事態に陥りかねない状況だという。
メジャー流の保険システムはグラウンドでのプレーにも影響を与えるようで、
「試合中に何か異変が伝われば、すぐに選手が診断を受け、即離脱ということも起こりうる。過去には、ワンバンした投球が左足の小指に当たっただけで大金をせしめた打者もいましたから」(前出・スポーツ紙デスク)
前回の17年大会、前々回の13年大会は、いずれも名だたる日本人メジャーが不参加を表明して3位に終わった。二の舞だけは避けたいが、メジャー球団も同じ思惑のようで、
「日本人メジャーのWBCの参加について、MLBが過敏になるのは当然。09年大会で、松坂大輔は股関節の故障を隠してWBCに強行出場した。そのツケは大きく、同年シーズンはたった12試合の登板で4勝6敗、防御率5.76(前年は29試合、18勝3敗、2.90)に終わりました。11年にはトミー・ジョン手術を受け、WBCで選手生命を縮めたと言っていい」(前出・メジャー担当記者)
人情論だけでメジャー球団が納得してくれるかどうか、はたして‥‥。