小学生の子供を持つ親にとっては「恐怖の春」がやってきた。
春は入学進級とおめでたいことばかりではない。PTA役員の改選があるからだ。筆者の元同僚看護師は、子供5人を抱えて途方に暮れているという。
「切迫早産の末に、昨年7月に5人目の子供を出産。ところが長男長女が通う小学校で、小学6年のボスママからPTA役員をやれと迫られた。保育園も決まっていないのに、どうしたらいいか」
少子高齢化の現代、5人の子供を産み育てている上に看護師の仕事も続ける彼女は、元同僚という贔屓目を差し引いても「日本の救世主」というしかない。ところが娘1人の育児がひと段落した高学年のPTA役員に、目をつけられてしまったという。5人の母が続けて嘆く。
「ウチの子供は新3年生、新2年生になりました。保護者会の最後にPTA役員が教室に乗り込んできて、赤ん坊を抱っこしていた保護者3人に向かって『子供を産んだからって、いい気になるな。PTA役員を断る理由にはならない。今年度のPTAをやってもらう』とまくし立てたんです」
乳児を抱えた母親をイジメるPTA役員は子育てもひと段落、1人娘は中学受験をするでもなく、仕事もしていないヒマな専業主婦だという。つまりはPTAを口実に、2時間毎の授乳で満足に眠れない保護者をイジメるほど、ヒマなのだ。
「学校に相談したらどうか」と筆者は助言したが、担任も学年主任も「PTA活動は教員では手が回らない学校行事を手伝っていただいているので…」と逃げ腰だという。教職員も、PTA役員からのクレームが怖いのだ。
PTAを舞台にした専業主婦のママイジメは、これだけにとどまらない。
筆者の家族の小中学校でもコロナ禍では、PTAが勝手に運動会の日程を学校と決めてしまい、専業主婦だけが運動会を観戦するという暴挙に出られた。自分も含めた働く親達が教育委員会に猛抗議したのは、言うまでもない。
都内の多くの小中学校で給食が無償化したというのに、専業主婦の暇つぶしサロンと化したPTAに、保護者は毎月3000円の会費をぼったくられる。PTAのボスママ達が小さい子供連れをママイジメのターゲットにするため、第二子、第三子を産むのを躊躇する家庭もあるほどだ。
PTAなんて、百害あって一利なし。古くはドリフターズの番組を有害指定するなど、テレビ番組に余計な口を挟み、少子化を招き、厄災しか生まない。異次元の少子化対策を口実に増税するなら、少子化対策など要らない。文部科学省がただひと言「PTAをぶっ潰す」と言ってくれるだけでいい。
そして小中学生を持つ親から、この記事を読んだ読者まで、誰もが思うのは、
「PTAなんて、ママイジメするほどヒマな主婦だけでやってろ」
(那須優子/医療ジャーナリスト)