4月9日の投開票で統一地方選の前半戦が終了し、今度は衆院・参院の補欠選挙など後半戦が始まる。特に大阪市は知事、市長、府議、市議の4つの選挙の投開票日が9日であったために、街宣車に乗るウグイス嬢の争奪戦が熾烈だった。ウグイス嬢歴20年以上のUさんの証言から、その実態を探ってみた。
Uさんは大学時代からウグイス嬢をしており「彼女がマイクを握れば、候補者は当選する」というジンクスを持つ「当選請け負いウグイス嬢」として、関西地区では名の通った40代の女性である。学生時代には劇団に属し、アルバイトだったイベントコンパニオンとしても、聴衆の前で喋ることには慣れている。
「私がウグイス嬢になったのは、短い期間に手っ取り早くお金を稼げることがありました。知人の紹介だったのですが、ウグイスの親方みたいな方の、明日はどこそこに、という指図通りに動いていたんです。そのうちに、当選できる候補者のウグイス嬢になるのが、報酬の支払いの際にトラブルがないことが分かってきました。知人のウグイス嬢で、担当した候補者が落選したため規定の報酬を支払われなかったケースがあったんです。私はあらかじめ、担当する候補者を選ぶようになりました。そうすると後々、『おいしい仕事』も回してくれるようになります」(Uさん)
公職選挙法ではウグイス嬢への報酬は1日1万5000円までと決められているが、
「これにも抜け道があって、当選した候補者の事務職員として働かせてもらったり、公職選挙法があるので詳しくは言えませんが、まぁいろいろあるんです(笑)」(Uさん)
彼女の評判はウナギ登りで、いろいろな陣営から声を掛けられるようになる。Uさんに、ウグイス嬢の資質について聞いた。
「早朝集合もあるので、まず時間を厳守することですね。それと候補者を当選させるんだ、という熱意が大事です。チームとしての団結力も出ますし、ローテーションで乗り替わっても、同じように応援できることになります。具体的にはマイクの使い方が上手い子、マズい子がいます。マイクに声が乗らない子がいるんです。それと笑顔がぎこちない子も。美人だからOKだということはなく、愛嬌があって親しみやすい、というのが重要ですね。ベテランのウグイス嬢を手放さない親方もいるんですよ。私も特別なウグイスは囲うようになりました」
実はUさんは10年ほど前からウグイス嬢の親方になり、ウグイスを育てる側になっている。
「街宣車から道行く方や自宅にいる方をいち早く見つけて声を掛ける、というのがベテランのウグイス嬢です。例えば『マンションのベランダから可愛いお子さんと一緒に手を振っての応援、ありがとうございます』というのは、子供さんを可愛いと褒めるのが重要なんです。誰もが自分の子供を褒められて、嫌な気持ちにはなりません。大したことがなくても、褒めるのは基本です。『青い屋根の2階の窓から手を振っての応援ありがとうございます。皆さまが暮らしているこの街をもっともっとよくするために、頑張っていきます。○○を宜しくお願いします』…これは特定の家に向かって声をかけているということが大事です。あるいは『お買い物帰りの奥様、美味しい夕食のご準備、ご苦労様です』。スーパーから出てきた客に向かって、このようなセリフを言うこともありますね。こんなことを教えているんですが、本当にウグイスのなり手が少なくて困っているんですよ」
ウグイス嬢の世界もなかなか面白いものだ。