ヤンチャな父親を持つ芸人がいる。意外なことに、父親のそういった気質が芸風に見え隠れする場合がほとんどなのである。
オードリーの若林正恭は実際に、自分が父親に似ていると感じている。若林の父親が、島根県の過疎の村にある母親の実家に、結婚の許しをもらいに行った時のことだ。
「ウチの母ちゃんの姉のダンナが『こんなヤツはダメだ』って言って。そしたら、タカヒコ(父親)が、そのダンナをぶっ飛ばしちゃったんだって。それ以降、ウチの母ちゃん側の家と問題になっちゃって」
それ以降、父親は母親の実家には近寄らなかった。子供の頃、若林は母親の里帰りに付いていくと、
「ほかの親戚の両親は来てるのに、なんでウチの親父だけいないのかな」
と不思議に思っていたらしい。
番組で熱く口論してしまうのは、宮下草薙の宮下兼史鷹。彼の父親は、建築系の仕事に携わりながら、地下格闘家をしていたそうだ。
宮下が父親と初めて、サーフィンをしに、海に行った時のことだ。お腹が空いたのでおにぎりでも買おうと、コンビニに寄った。見れば、駐車場に不良がたむろしている。
「親父は他の所に止めればいいのに『どけよ』みたいな。そしたら不良も『なんだよ』みたいな、ケンカバチバチになって」
不良がナイフを出したが、まったく億することなく「やってやるぞ」みたいな態度で接していると、ナイフで肩を刺されてしまった。ところが、すぐさま逆襲し──。
「親父がその腕をガッてつかんで、次の瞬間、すごいことに。『お前ら、軟体動物にしてやろうか』と。ギャーってなって、マンガみたいな感じで」
そのあと、父親はなぜか病院に行かず、海へ。海水に浸かると「ちょっと無理だわ」と息子にひと言漏らしたそうだ。
(坂下ブーラン)
1969年生まれのテレビディレクター。東京都出身。専門学校卒業後、長寿バラエティー番組のADを経て、高視聴率ドキュメントバラエティーの演出を担当。そのほか深夜番組、BS番組の企画制作などなど。現在、某アイドルグループのYouTube動画を制作、視聴回数の爆発を目指して奮闘中。