安倍晋三元首相が昨年7月に暗殺されたことに伴う衆院山口4区の補欠選挙では、安倍元首相の後継たる吉田真次氏が勝利したことで「新たな争い」のゴングが鳴った。
山口4区は衆院の定数「10増10減」の伴い消滅し、新山口3区に入るため、吉田氏は林芳正外相(岸田派)との戦いに突入するのだ。安倍氏が率いた党内最大派閥たる安倍派の中堅議員からは、
「林外相は我々が支える岸田文雄政権のNo.2。しかも参院議員として山口県全県を選挙区にしていたので、どこからでも勝てる。現支部長の評判がよくないといわれる山口1区に移るべきだ」
との意見が出てきている。
山口4区は中選挙区時代の山口1区。安倍氏の父・安倍晋太郎元外相、林氏の父・林義郎元蔵相、田中龍夫自民党元総務会長らが激しく争った。林氏は小選挙区制度が導入されてからは比例代表に転じ、長男の芳正氏は参院議員として立候補。21年に衆院に転じ、山口3区から当選した。
新山口3区の中心市である下関市はもともと、林氏の地盤だった。21年の衆院選における、下関市の投票率は47%。4月23日投開票の補選では、それより14ポイント減の33%だった。安倍派内には「林支持者が投票に行かなかったためではないか」との疑念も出ている。それだけ下関市では、安倍派と林派に分かれてしのぎを削っているのだ。
それでも順当にいけば、外相でもある林氏が新3区で、吉田氏が比例代表に回るが、吉田氏の後ろ盾となるのは、約100人のメンバーを誇る安倍派。林外相が所属する岸田派は党内勢力4番目の45人を抱えるにすぎない。前出の安倍派中堅議員が言う。
「半分以下しかいない岸田派のために、議席を譲る必要はない。政権を維持したければ、譲るのは林氏の方だろう」
そんな強硬論が強まっているというのだ。
岸田首相が安定した政権運営をするためにも、安倍派の支持は不可欠。一方で、6月にも解散・総選挙に踏み切る選択肢があるだけに、早急に候補者調整をしなければならない。岸田首相としても、こればかりは得意の「検討使」ではいられないのだ。