新型コロナの感染症法上の位置づけが5月8日から5類に格下げされることを受け、観光庁は6月末まで延長された全国旅行支援の利用条件を撤廃すると決めた。
これまでは「ワクチンの3回接種証明」か「旅行開始日直前の陰性証明」の提示が必須の利用条件とされてきた。それが5月8日からは接種証明も陰性証明も不要とされたことで、事実上、全国旅行支援はほぼ無条件で利用できるようになったのである。
だが、今回の観光庁の決定に「何を今さら」の感が拭えないのもまた事実だ。
というのも、昨年10月に全国旅行支援がスタートした際、本サイトが公開した記事(10月9日)でも指摘したように、そもそも接種証明や陰性証明を利用条件とすること自体、科学的には全くナンセンスとしか言いようのない政策だったからである。
ワクチンを3回接種しても、ブースター感染は防げない。また、旅行開始日直前の陰性証明も、旅行開始日の陰性を証明するものではなく、いずれも感染の拡大防止には根本的に無力なのだ。公衆衛生学の専門家も、次のように指摘している。
「厚労省や観光庁の役人もバカではないから、そんなことはハナからわかっていたはず。今回、利用条件の撤廃に踏み切ったのは、5月8日から陰性証明を得るための無料検査が廃止されることで、国民から不満や怒りの声が上がることを恐れたからにすぎません。まさに、ご都合主義の極み。政府がやってきたコロナ対策は支離滅裂です」
ただし、この「何を今さら感」とは別に、全国旅行支援を契機とした感染拡大には、今後も警戒を怠ってはならないという。公衆衛生学の専門家が続ける。
「接種証明や陰性証明が必要か否かにかかわらず、不特定多数の人との接触の機会が増えれば、それだけ感染が拡大していくのは確実です。事実、コロナウイルスは今も変異を続けています。マスクの着用が個人の判断に委ねられるなど、脱コロナの風潮が広がり始めた今だからこそ、いっそうの警戒が必要になってくるのです」
政府がアテにならない以上、自分の身は自分で守るしかないということだ。