タイ・バンコクのマンションで身元不明の乳幼児9人が保護されたことに端を発する大騒動。子供たちは24歳の日本人資産家男性が代理出産で産ませたというが、その数は日に日に増え、20人以上とまで報道されている。男性の目的は何か。取材を進めると、まるで金のために人間を「養殖」しているかのような異様な動機が浮かび上がってきた──。
「数日前に、部長クラスが一堂に会する社内ミーティングがあったのですが、その席で上長から『タイでの日本人男性の代理出産による問題は、あくまで創業者のご子息の個人的な問題であり、我が社とは何ら関係のないこと。よけいな発言などは慎むように』と通達がありました」
そう明かすのは、東京都内に本社を構える有名IT企業「X」社の経営幹部の一人だ。さらに続けて言う。
「ウチの会社は、強引な営業や水増し契約などが問題視されてブラック企業の代名詞のような存在でしたが、最近は人気女性タレントを広告塔にした保険会社を立ち上げるなど、イメージアップも図ってきました。それなのに、今回の一件でイメージダウンは必至。現場のモチベーションは、相当下がっていますよ」
──大勢の赤ん坊の泣き声を不審に思ったマンション住民の通報で明るみに出た、タイを舞台にした前代未聞の代理出産騒動。
乳幼児の父親であると主張している投資家の日本人男性A氏(24)は、問題発覚直後にタイ警察から、代理出産で乳幼児を数多くもうけた事情について、説明するよう出頭要請を受けた。が、その直後に、プライベートジェット機でタイから脱出し、行方をくらませた。
全国紙記者が言う。
「8月7日にタイを出国し、マカオへ向かい、さらに香港を経由して今は日本で雲隠れしているようです」
当初A氏は、24歳で香港に本店を置く投資コンサルタント会社を経営し、さらに総資産70億円の投資家と報じられたが、実名を含め詳しい素性は明かされなかった。ただし現地メディアでは、程なくこの男性のフルネームをアルファベット表記で報じ、その読みと年齢がX社の会長兼CEOの息子と一致。A氏はこのX社の御曹司ではないかという説がネットなどで拡散したのだ。
現時点(8月16日)で、X社側はその事実関係には一切答えていない。が、冒頭の経営幹部の証言からもA氏がこのX社の御曹司であることは明らかだ。経済事件に詳しいジャーナリストの山岡俊介氏が言う。
「A氏は、従業員数9000人以上の東証1部に上場するX社の大株主。X社の創業者でもある父親のB氏は、ITバブル絶頂期の1999年に経済誌『フォーブス』に当時、約2兆6000億円の個人資産を持つ世界5位の富豪として紹介されている経営者です」
問題発覚当初、タイ警察が発表した保護された乳幼児の数は9人。現地でA氏の代理人を務めた弁護士は、A氏が子供を必要とした理由について「事業の後継ぎのため」などと説明した。ところが、A氏が国籍もさまざまな複数の代理母に産ませたとされる子供の数は日増しに膨れ上がり、8月15日には20人にまで達したのだ。異様と言わざるをえないA氏の行為の動機について、複数の説が浮上している。以下、順を追って見ていこう。