ロシアの首都モスクワにあるクレムリン(大統領府)に対して行われた、無人機(ドローン)攻撃。5月3日未明のこの破壊工作を巡っては目下、【1】ロシアによる自作自演、【2】ロシアの反体制組織によるテロ、【3】ウクライナによる軍事攻撃、【4】ウクライナの地下組織によるテロ、という4つの可能性が取り沙汰されている。
だがそのいずれにも、以下のような疑問符が投げかけられているのだ。
【1】プーチン大統領が、自らの権威を貶めるような自作自演を仕掛けるとは考えにくい
【2】反体制組織がモスクワの警戒網をかいくぐって攻撃を仕掛けるのは、極めて難しい
【3】大規模な反転攻勢を控えたウクライナに、クレムリンを攻撃するメリットは乏しい
【4】地下組織がロシアの警戒網や防空網を突破して侵入、攻撃するのは不可能に近い
そんな中、驚くべき見解が急浮上している。欧米の諜報筋によれば、クレムリンに攻撃を仕掛けたのは、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者にして総帥のプリゴジン氏だというのだ。欧米の諜報機関に太いパイプを持つ国際軍事アナリストが声を潜めて明かす。
「プリゴジンはモスクワの警戒網や防空網の詳細を熟知している。ズバリ、クレムリンを攻撃できるのはプリゴジンしかいないと、欧米の諜報筋はみているのです。プリゴジンの心中には、長年にわたってプーチンを支えてきた最側近にもかかわらず、ウクライナとの戦争で貧乏クジを引かされ続けてきた、との不満が渦巻いています。その不満を、クレムリンに対する未明の無人機攻撃という形で大爆発させ、プーチンに『オレとワグネルを甘く見るな』との暗黙のメッセージを送りつけた。プーチンにとっては、まさに『寝耳に水』の出来事で、いったい何が起きているのか、見当もつかなかったはずです」
これなら、ロシア政府がくだんの攻撃のあった時刻から、約12時間も沈黙を続けていた謎も氷解する。国内外にどう説明すべきか、時間稼ぎをしていたのである。