その時、モスクワにあるクレムリン(ロシア大統領府)は大パニックに陥った──。本サイトが6月27日に公開した記事では、ロシアの民間軍事会社ワグネルを率いるエフゲニー・プリゴジン氏が主導した武装蜂起による反乱が、プーチン大統領の心胆を大いに寒からしめ、独裁者の威信を一夜にして失墜させたことを指摘した。
その後、渦中のプリゴジン氏は隣国ベラルーシに亡命し、一連の事態は沈静化に向かいつつあると報じられている。だが、これは表向きの話にすぎなかった。ロシア情勢に詳しい国際政治アナリストが声を潜めて明かす。
「プーチンは少なくとも24時間前に、反乱の兆候を察知していたとされます。にもかかわらず、プリゴジンはわずか1日で首都モスクワから約200キロの地点にまで部隊を進めることができた。この事実は進軍ルートに展開していた多くのロシア軍が、プーチンの鎮圧命令に従わなかったことを示しています。プーチンは『ロシア軍内にもプリゴジンの協力者がいたのではないか』と、疑心暗鬼に陥っているのです」
すなわち、プーチン政権にとって「裏切り者」の存在が明らかになったのである。
そんな中、さらに衝撃的な情報が飛び込んできた。ロシア軍の副司令官セルゲイ・スロビキン氏が逮捕、拘束されたというのだ。
「スロビキンは『ハルマゲドン大将』の異名を持ち、残虐な指揮官として名を馳せてきた人物。それがワグネルのVIPメンバーだったことが発覚し、ロシア当局から厳しい尋問を受けているのです。しかもワグネルのVIPメンバーとして、ロシア軍や情報当局を中心に、少なくとも30人の高官らが名を連ねていた疑惑も浮上している。つまり、プリゴジンが主導したとされる今回の武装蜂起は、軍や政権も含めた組織的な反乱だったことが、明らかになってきたのです」(前出・国際政治アナリスト)
今回のスロビキン氏の逮捕を受け、ロシアをはじめとする複数のメディアは、プーチンが反逆者の大規模な粛清に乗り出す可能性を指摘している。
ただ、そのプーチンは粛清を断行すればするほど、独裁者としての威信はさらに地に堕ちていくという、悩ましいジレンマを抱えている。
いずれにせよ、プーチン政権が今、音を立てて崩れ始めたのは確実だ。