ロシア国防省が11月9日に自軍に対し、ウクライナ南部のヘルソン州一部地域からの撤退を命じ、11日には撤退が完了したことを発表した。反転攻勢を続けるウクライナ軍にとっては大きな前進となったが、どうやら手放しで喜べる状況ではないようだ。
ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領府長官顧問は10日、ロシア軍が撤退の腹いせでアパートや下水道など、あらゆるものを破壊していると、ツイッターで批判。「ロシア軍はヘルソンを死の街にするつもりだ」と訴えた。
また、イギリスの国防省は、ロシア軍が撤退の際に複数の橋を破壊し、地雷を仕掛け、ウクライナ軍の進軍を遅らせていると分析している。軍事ライターが、現地の知られざる惨状を明かす。
「ロシア軍は戦時国際法を踏みにじり、まさにやりたい放題です。軍事目標と一般市民を区別せずに無差別攻撃を繰り返し、インフラや公共施設をことごとく破壊。現地住民の女性は乱暴を受け、子供から老人まで見境なく殺害されています。そもそもロシアには条約や協定を守るという意識は一切なく『まさか核は使わないだろう』などという楽観的な見方も通用しない。アメリカはウクライナに対し、移動式防空システム『アベンジャー』や地対空ミサイル『ホーク』など、4億ドル(約568億円)規模の軍事支援を提供すると発表しました。追い込まれたプーチンが何をしでかすか分からない状況は、ますます危険度を増していると言っていいでしょう」
ロシア国内では、長引く戦争により、国民の不満が溜まり始めているという。大規模反戦デモでプーチン政権を転覆させ、戦争終結につなげる…そんな動きは期待できないものか。
(ケン高田)