「個人情報保護に関して、国民の信頼を傷つける、たいへん重大な事故であり、まことに申し訳なく思っている。管理体制について、確認を進めていきたい」
河野太郎デジタル大臣は5月9日の閣議後の記者会見でこう述べ、マイナンバーカードによるコンビニでの住民票交付を一時停止すると発表した。
新たに開始されたコンビニでの住民票交付を巡っては、今年の3月から5月にかけて、神奈川県横浜市と川崎市、さらには東京都足立区で、申請を行った住民に「他人の住民票」が交付されるという、考えられない大チョンボが相次いだ。
今回、一連のトラブルが発覚したのは、富士通Japanが提供しているシステムだ。河野大臣によれば、目下のところ、同社のシステムを導入しているのは全国約200の自治体、アカの他人の住民票が交付された事案は合計13件で、システムの再点検を指示しているという。
だがこれは、システムの不具合や再点検で済まされる問題ではない。マイナンバーカードの導入に反対してきた野党議員は、次のように憤激の声を上げる。
「だから言わんこっちゃない、の典型ですよ。河野大臣は今回のトラブルを『不具合』と言っていますが、他人の住民票が交付されてしまったのは、申請者のマイナカードと住民票との紐づけが、正しく行われていなかったからでしょう。そうだとすれば、戸籍謄本なども含めて、今後も同じようなトラブルが続発することになりますよ」
政府がマイナンバーカードへの紐づけを推奨しているのは、健康保険証、自動車運転免許証、預貯金口座など、多岐にわたっている。
「政府は最大2万円相当のマイナポイントの付与をエサに、国民に対してマイナカードの取得を血眼になって呼びかけている。しかし、今回のような個人情報の漏洩は、住民票に限った話ではありません。事実、中央省庁や自治体が管理するデータベースがハッキングされる事例は、次々と報告されているのです」(前出・野党議員)
進取の気性をハナにかける河野大臣は、たかだか「ハンコ行政」に楔を打ち込んだからといって、有頂天になっている場合ではないのだ。