今週のメインは樫の女王を決めるオークス。先の桜花賞がマイル戦だけに、関連性は小さいと見られがちだが、牝馬に限らず、この時期の3歳馬は勢いがモノを言うようで、「二冠」を手にする馬も少なくない。
まずは桜花賞を振り返ってみよう。終始2番手で運んでいたコナコーストが最後の直線で先頭に立ち、そのまま真っ先にゴール板を通過するとみられたその瞬間、矢のような末脚ですっ飛んで差し切ったのがリバティアイランド。恐るべき瞬発力を披露したその勝利には、誰もが驚かされた。4コーナーを16番手で回っての豪脚。とても同い年との争いとは思えぬ離れ業だった。
そうした馬であるなら、過去に二冠を成し遂げたスティルインラヴ(03年)、ブエナビスタ(09年)、アパパネ(10年)、ジェンティルドンナ(12年)、アーモンドアイ(18年)、デアリングタクト(20年)、スターズオンアース(22年)などと同じ芸当を演じて、リバティアイランドが人気に応える可能性は大いに高いとみて当然である。
母はマイラー色が濃かったものの、2000メートルのGIを勝った豪州の女傑であり、父ドゥラメンテは言わずと知れた皐月賞、ダービーを制した二冠馬。距離に不安はないとみるべきで、前述した馬たちと同様、このオークスでも勝ち負けとみるのが筋だろう。
それでも絶対視すべきかとなると怪しい。血統的な不安はないとはいえ、これまでの4戦はすべてマイル戦で〈3 1 0 0〉。2着に敗れたアルテミスSは脚を余してのクビ差だった。高い能力の持ち主であることは間違いないが、直線の長い府中の2400メートルが今回の舞台であることを思うと、全幅の信頼は置きづらい。少なくとも我ら穴党としては、この馬を本命視するわけにはいかない。
さらっと過去のデータを見てみよう。03年に馬単が導入されて以降、これまでの20年間、その馬単による万馬券は7回(馬連は6回)。この間、1番人気馬は8勝(2着3回)、2番人気馬は2勝(2着5回)。1、2番人気馬によるワンツー決着は4回。堅い時は堅いが、荒れることも少なくなく、まずは中穴傾向のGI戦である。
騎手で言えば、C・ルメールとM・デムーロが上位を演じることが多く、過去8年でルメールが〈3 1 0 3〉、デムーロは〈2 0 2 4〉と2人で5勝を挙げている。当方が最も期待を寄せたいのは、そのルメールが騎乗するハーパーだ。
桜花賞は3番人気で4着。道中は6番手でスムーズに追走していたかに見えたが、直線を向いてごちゃつく場面があり、追い出しのタイミングが悪かった。それでも、しまいまでしっかりと伸びていて、勝ったリバティアイランドとの差は3馬身もなかったのだから、悲観する必要はない。むしろ、それまで戦ってきた顔ぶれより一気に強くなっていたことを思えば、この敗戦が大きな糧となったはずだ。
この中間は順調で、1週前の追い切りも実に軽快でリズミカル。桜花賞当時より雰囲気はよく「体がふっくらとして、落ち着きがあるのがいい。東京コースも2度目。クイーンC(1着。前走比マイナス12キロ)の時のように体重を減らすことはない」と、厩舎関係者も口をそろえる。
であれば、ハーツクライ産駒で距離延長は望むところ。名手・ルメールとのコンビ継続だけに、桜花賞以上のパフォーマンスに期待したい。
穴中の穴はシンリョクカだ。こちらも距離が伸びていいタイプで、新馬勝ちを決めたように東京との相性はいい。要注意馬として挙げておく。