新型コロナが落ち着いたと思ったら次は麻疹、そしてその次は──。
目が充血したり、喉が真っ赤に腫れる「咽頭結膜熱」を起こすアデノウイルスが今、猛威をふるい始めている。都内小児科クリニック院長が、顔を曇らせる。
「小児科では新型コロナ疑いのお子さんから、すっかりアデノウイルスに置き換わりました。プールを介して感染するので、水泳授業が始まるこれからが流行の本番です」
事実、5月18日に発表された東京都感染情報センターの集計(5月8日から14日報告分)によれば、感染者を報告する都内261施設で、前週の66人から122人と、アデノウイルス感染者数が倍増している。
不気味な点もある。全世界で子供たちが発症、肝臓移植を必要とするような「急性肝炎」の原因が、この「ジャイアン」アデノウイルスにくっついている「スネ夫」のような随伴ウイルスではないかと、欧米の研究者が指摘しているのだ。急性肝炎を起こした子供から随伴ウイルスが検出されており、肝炎を起こす頻度は高くはなくとも、アデノウイルス感染が広がれば、注意するに越したことはない。
なにしろ3年間の活動自粛で、今までマスクをつけてきた子供達がいきなり無数のウイルスにさらされることになる。今まで外で遊ぶことも許されず「無菌状態」で育ってきた子供には、免疫機能が十分に備わっていないのだ。前出の小児科院長が、対処法について言うには、
「新型コロナだと思って自宅療養していたら目が赤くなり、眼科や小児科を受診して、アデノウイルスと診断された患者さんもいます。お子さんが高熱を出したら新型コロナウイルスだけでなく、季節外れのインフルエンザ、そして麻疹とアデノウイルスの可能性があると、頭の片隅に入れておいて下さい」
いずれも感染対策は手をよく洗い、タオルや食器の共用を避けること。そして免疫ブースト効果を期待し、麻疹風疹ワクチンを含めた、乳幼児の定期ワクチン接種を受けることだ。
(那須優子/医療ジャーナリスト)