巨人が東京ドームから本拠地を移転する──。そんな驚くべき話が現実味を帯びてきたという。スポーツ紙ベテラン記者が、巨人を取り巻く現状を説明する。
「今年は3月のWBC人気の余波を受け、東京ドームの主催試合はそれなりに席が埋まっていますが、かつてのようなプラチナチケットではない。チケット収入はけっこう厳しいと思いますよ」
東京ドームは1988年3月18日に、国内初のドーム球場として開場した。それも今年で開場35年。耐用年数は100年とされているが、実際はそろそろ建て替えを検討する時期を迎えている。開業当時の建築費は約350億円で、もし建て替えるとなれば、今はその数倍のコストがかかることは間違いない。
現在、巨人は東京ドームに年間25億円から30億円の使用料を支払っているとされる。だが球場を再建築すれば、その建築費が使用料に上乗せされることになる。巨人にとっては笑って済むような話ではないのだ。球界OBが言う。
「かつて日本ハムが東京ドームをフランチャイズとしていた時期に聞いたことがあるが、年間の観客動員が200万人を割ると、使用料を払えなくなるということだった。それが北海道移転の理由にもなったらしい」
昨年、東京ドームにおける巨人の観客動員は、主催72試合で231万8302人。平均で3万2199人だ。今季は6月4日時点で主催25試合を終え、91万7963人。平均3万6719人である。このままのペースならデッドラインの200万人は超えるだろうが、早々とペナントレースから脱落するようなら、大台確保は難しい状況となる。
来季以降、その動員数が回復する保証はない。その上、建て替え分の費用が上乗せされれば、たまったものではない。
そこで持ち上がってきたのが「築地市場跡地に新球場を自前で建設する」プランだ。同市場跡は19.4ヘクタールの広さがあるが、そのうち18ヘクタールが貸し付け対象となっている。球場だけではなく、全体をボールパークにして人を集めるには十分だ。スポーツ紙デスクは、
「巨人にとって、自前の球場を持つのは悲願だった。東京ドームの建て替えプランが持ち上がるこのタイミング…絶好の移転時期が来たと考えても不思議ではないのです」
後楽園球場、東京ドームと水道橋に根を張ってきた巨人が、劇的な転換点を迎えつつある。
(阿部勝彦)