「口裂け女」と聞いても、平成生まれにはピンとこないかもしれないが、昭和の時代、それはまさに日本中を震撼させた「純国産妖怪都市伝説」の主人公だった。時代を超えて、そんな妖怪が登場する映画「先生!口裂け女です!」が、7月7日から全国公開される。
物語は木戸大聖扮するヤンキー高校生ら3人が、原付バイクで窃盗を繰り返す中、盗んだバイクの持ち主である口裂け女に追われる、というヤンキー高校生と口裂け女の攻防を描く、青春バトル・ホラー・エンターテインメントだ。
「口裂け女」の伝説が日本で流布され始めたのは、1979年の春から夏にかけてのことだが、オカルト研究家によれば、発祥は1978年12月初旬の岐阜県だったという。
「きっかけは、岐阜県本巣郡真正町付近で、農家の老婆が母屋から離れたトイレに入った際、口裂け女を見て腰を抜かしたという話が広がったことで、翌79年1月26日付けの岐阜日日新聞がこれを報道。すると全国各地で同様の目撃談が相次いで報告された。さらに6月には、兵庫県姫路市内で25歳の女が口裂け女を模倣し、包丁を手に徘徊。銃刀法違反容疑で逮捕されたことが大々的に報じられると、社会現象になったというわけなんです」
口裂け女の容姿については、目撃された場所によって若干異なるものの、共通するのは長い髪、口を覆う大きなマスク。そして「私、キレイ?」と尋ね、「キレイ」と答えると「これでも?」とおもむろにマスクを外す。するとその口は耳元まで大きく裂けており「キレイじゃない」と答えると、包丁や鋏で斬り殺されるというものだ。先のオカルト研究家が補足する。
「実は口裂け女を思わせる噂は、江戸時代にも存在しています。怪談集『怪談老の杖』によれば、大窪百人町(現在の新宿区)で雨の中、傘をさした若者がズブ濡れの女に、傘に入らないかと声をかけた瞬間、振り返った女の口が耳まで裂けており、若者はショック死してしまったというんです。『絵本小夜時雨』という読本にも、遊郭の客が大夫に声をかけると、その女の口が耳まで裂けていて、客は遊郭通いをスッパリとやめたことが描かれています」
口裂け女伝説は80年代前半には終息したが、90年代に入り再燃。その時には、整形手術に失敗して理性を失った女性が犯行に及んでいる、といったまことしやかな説が流れたものだ。
さて、今回の映画公開で、再び都市伝説に火が付くか。昭和のオカルトファンの期待は膨らむばかりだ。
(ジョン・ドゥ)