藤浪晋太郎のオリオールズへの電撃トレードはある意味、アスレチックスの厄介払いだった。
藤浪は34試合に登板し5勝8敗、防御率8.57の成績を残している。開幕当初は先発ローテーション入りしていたが、制球に苦しみ、中継ぎに降格。スターターでの登板もありながら、6月20日のガーディアンズ戦からは11試合連続で無四球と、成績が安定してきていた。
本来ならチームとしては喜ばしいことだが、アスレチックスは98試合終了時点で27勝71敗、勝率わずか2割7分6厘。ポストシーズン進出どころか、アメリカン・リーグ西地区で歴史的な低迷を続けている。実際のところ、藤浪が活躍しようが打ち込まれようが、あまり意味はない。資金難もあって、チーム再建はイバラの道という球団なのだ。
ア軍が藤浪と結んだのは、1年契約。チームに残留させるには、契約を結び直さなくてはならない。ところが再契約にあまりメリットはないというのが、専門家の見方だ。「藤浪の年俸は325万ドルで、チーム5位の高給取り。再契約となれば、吸血鬼の異名を取る代理人スコット・ボラス氏が、さらに高額年俸の複数年契約を要求してくることは確実。貧乏球団のアスレチックスとしては、そんな要求を飲めるはずがありません」(MLBに詳しいスポーツジャーナリスト)
さらに好成績を残し始めたことで、藤浪のわがままが始まりそうだったと、前出のスポーツジャーナリストが、ズバリ指摘する。
「それは先発への再転向要求です。藤浪の評価が高まったのは短いイニングを任せられるメドが立ったためで、長いイニングを投げさせるほどの信頼感はない。いつ四死球連発に逆戻りするか、わかりませんからね。藤浪は阪神時代から、先発にこだわっている。今後、火種になりかねない、というわけです」
アスレチックスはオリオールズ傘下3Aノーフォークから、26歳の左腕投手イーストン・ルーカスを獲得した。実際のところ、米国内の藤浪の評価は、マイナーリーグの投手との1対1トレードが妥当ということだったのだ。
移籍先のオリオールズは7月20日(日本時間)に、ア・リーグ東地区で首位に立った。そんな強豪チームの一員となり、今後は藤浪を見る目が厳しさを増すのは間違いない。全ては藤浪本人次第だが、アスレチックスにとっては、もはやチームに置いておくメリットがないことが浮き彫りになった、今回の電撃トレードだった。
(阿部勝彦)