阪神タイガースはまた「歴史」を繰り返そうとしているのか──。この老舗球団が優勝したのは、セントラル・リーグに加盟してから72年間で1962年、1964年、1985年、2003年、2005年のたった5回だけ。日本一になったのは、1985年のただ一度だ。阪神の歴史はすなわち、V逸の歴史でもある。球団関係者が言う。
「人気球団ゆえファンからのプレッシャーが強く、シーズン終盤の勝負どころで負けるケースが多く見られます。在阪メディアの責任も大きいですよ。調子がいいとすぐに持ち上げるから、油断を生んでしまっています。在阪メディアで活動する評論家もタイガースを過剰に持ち上げる傾向があり、ネガティブな意見を発する解説者は敬遠され、使われなくなる。そういった空気感も、阪神がなかなか優勝できない原因になっています」
今年は5月に球団タイ記録の19勝を挙げて独走状態に。6月7日には貯金18にして、2位DeNAとはゲーム差6.5まで広げたのだが、そこからまさかの失速。またしても、V逸の足音がヒタヒタと近づいくる気配が漂い始めたのだ。球界OBが言う。
「今年の在阪メディアも、タイガースが好調時は岡田彰布監督を異常なほど持ち上げて『神格化』させていた。メディアが球団内部を狂わせていると言っても過言ではない」
長いタイガースの球団史には、いくつもの信じられないV逸経験が刻まれている。直近では2021年がそうだった。
青柳晃洋、西勇輝、ガンケル、秋山拓巳、伊藤将司らが先発投手の軸となり、打線はマルテ、サンズ、ルーキーの佐藤輝明と中野拓夢、糸原健斗らを擁した。4月末の時点で20勝9敗。首位に立つと、一気に独走態勢に入った。夏前には2位・巨人に8ゲーム差もつけた。
ところが、だ。在阪テレビ局が「あかん阪神優勝してまう」と題して、阪神応援特番を放送。「優勝いただき隊」といったコーナーまで作られ、浮かれた内容が放送されたところ、そこから一気に低迷する。夏場にはリリーフ陣に疲れが見え始め、佐藤は59打席連続無安打、マルテやサンズの調子も落ち、エラーやボーンヘッドもあって大失速したのである。主軸の大山悠輔の不振も響いて、8月29日にとうとう首位から陥落した。
最終盤には巨人、ヤクルトとデッドヒートを繰り広げたものの、77勝56敗10分けの貯金21、勝率5割7分9厘でフィニッシュしたが、最後の最後でヤクルトに賜杯をさらわれた。勝ち数では優勝したヤクルトを4つ上回りながら、ゲーム差0でシーズン年間勝率2位となったのは、史上初である。矢野燿大監督の指揮のマズさや不可解な采配もあって、引き分け数が極端に少なかったことも原因と言われた。
(つづく)