13年7月、真夏の広島で発生した16歳少女リンチ殺人事件の主犯格の少女の裁判員裁判が始まった。事件発覚当時、その凄惨な手口や金銭トラブルが浮上したが、少女の口からは異様とも言える「ファミリー」の存在が語られたのだ。
事件は、13年6月28日の未明、被害者のB子さん(当時16歳)を男女合わせて計7名で暴行し殺害。現金などを奪ったうえで、死体を山中に捨てたとして、自首してきたA子を死体遺棄容疑で逮捕。その後、暴行に加わった6人も監禁と強盗殺人で再逮捕され、これまで公判前手続きが重ねられてきた。
そして迎えた10月7日から広島地裁で始まった主犯格のA子の裁判員裁判。起訴状では、
〈被害少女と女子生徒(編集部注・A子のこと)は2012年の春、専修学校に入学した時の同級生だった。(中略)金銭や男女関係でもめることも多かったが女子生徒は「嫌っていなかった」〉
と当初は、友人関係だった被害者と加害者が、共同生活を始めたことが、事件の“引き金”になったと証言している。
〈事件半月前の13年6月10日、交際相手だった無職少年(18歳=強盗殺人罪などで起訴中=)ら4人と広島市内で共同生活を始めたといい、特別な絆を持つ「ファミリー」と呼び合った。事件の引き金となったのはスマートフォンのLINEでのけんかだった。被告少女は腹を立て、その後に少女を呼び出した。(中略)被告少女は、女子生徒を車に監禁し、暴行が始まった後、自らたばこの火を押しつけたものの「もう許してあげようという気持ちになった」〉
だが、ここでA子被告を翻意させたのが他ならぬ「ファミリー」の存在だった。
〈いまさら許そうとしてファミリーに嫌われるのが怖かった。(被害者のB子さんが)全員に謝罪しても許す雰囲気でなかったので、この時、殺すしかないと思った〉(起訴状より)
そして、暴行がエスカレートしたあげく、B子さんを殺害後、犯行に加わった7人が口裏を合わせ、A子被告が出頭。単独犯行だと供述したことについても、
「ファミリーを守りたかった。大事だった」
と初公判で証言している。それにしても、ここまでA子被告が執着した「ファミリー」とはどのような存在だったのか。
地元の社会部記者が言う。
「10日の公判で出廷したA子を精神鑑定した精神科医の証言では、A子は、犯行時に他者に否定されると怒りを爆発させる『境界性パーソナリティ障害』だったと指摘。そのうえでファミリーについても『初めての安住の場所を失う怖さがあった』と証言しています」
しかし、そのファミリーのメンバーといえば、LINEで知り合ったA子被告の交際相手の無職少年に加え、13年初めに親しくなった16歳の少女とその恋人と、とても密接とは言いがたい関係だった。
「A子の家庭は、母親と祖母の関係が険悪で週に1回は殴り合うほどだった。止めに入ったA子を投げ飛ばす暴力も振るうなど、家にいるのが耐えられなかったようだ。15日の法廷ではA子の母親が出廷し、遺族に謝罪しています」(前出・社会部記者)
友人関係に依存し、その関係がもろくも崩れると、牙を剥いて犯行に及んだA子被告。弁護側は、過去の生育歴などを含め、情状酌量を求めていくこととなりそうだが‥‥。
「リンチを主導したのはA子だったばかりか、首を絞めたのも彼女だった。同時に逮捕された見張り役の瀬戸大平被告は、一審では懲役14年だっただけに、刑事処分相当として裁判所に逆送されたA子も厳罰を免れないでしょう」(前出・社会部記者)
17日に結審した裁判で検察側は懲役15年を求刑。判決が言い渡されたとき、何を思うのだろうか。