銀行を使う時は、銀行員と顔を合わせるな!やつらは「顧客の懐具合」を知っている
はじめまして、山崎元(やまざきはじめ)です。よろしくお願いします!
本コラムでの私の使命は、読者たちの財布の中身を守り、願わくはこれを膨らませるお手伝いをすることだ。私自身がまたオヤジでもあり、オヤジ読者に向けて、率直にかつ遠慮のない本音をお伝えするつもりだ。
さて、お金の扱い方で第一に気をつけるべきは、他人を信用しないことだ。豊富な人生経験を持つご同輩にはご理解いただけるだろうが、「本当に得になること」を他人に教えるバカはいない。人は本当に儲かる情報があれば、自分でそれを使うはずだ。まして、お金のプロなら当然のことだ。
警戒すべき相手として、今回は銀行を取り上げる。
皆さんのほとんどが、すでに銀行口座をお持ちだろう。銀行員は一見紳士的で証券マンなどよりも安心な感じがする。しかし、証券マンを警戒することは悪くないが、銀行員は、素人が相手にするには、あまりに手強いセールスマンだ。
銀行員は、銀行口座のお金の動きを見て、顧客の懐具合や生活を詳しく知ることができる。毎月の給料がいくらで、どの程度の家賃の家に住み、証券会社とお金のやりとりはあるか、などを知った上で、さらに定期預金がいついくらで満期になるかを知ってセールスに臨む。銀行が持つ個人の情報は、例えば池井戸潤の小説「株価暴落」(文春文庫)などを読むとリアルにわかる。証券マンのセールスは「今、お金がないんだ」と断ることができるが、銀行員にこの手は通用しない。
近年の銀行の個人向け営業は、お金持ち相手には運用商品の手数料で稼ぎ、貧乏人相手には小さな借金をさせて金利で稼ぐのが、基本的なビジネスモデルだ。
お金持ちに注意してほしいのは、銀行の窓口で売っている投資信託や個人年金保険と称する保険などを絶対に買わないことだ。
銀行の店頭で売っている投信・保険はどれも手数料が高すぎて「全て」ダメなものだと断言できる。
退職金の運用方法は、いずれ本連載で取り上げるつもりだが、筆者が心配するのは、皆さんの中に、退職金が振り込まれた銀行に退職金の運用を相談する人がいるのではないかということだ。懐具合を知っている相手に、運用の相談をするのは、素人には危険すぎる。
銀行との付き合い方に関してコツを1つ述べるなら、「銀行は、銀行員の顔を見ずに使え」と言いたい。
具体的には、できるだけインターネット・バンキングとATM(現金自動支払機)だけで用を済ませよう。ネットを使うと、振込や残高照会が24時間待たずにできる。店頭で銀行員に顔を合わせると、時間が無駄だし、余計な商品をセールスされる。また、冬場だと銀行の支店でインフルエンザがうつる心配すらある。
銀行員に油断するな!
◆プロフィール 山崎元(やまざき・はじめ) 経済評論家。58年、北海道生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事に入社し、野村投信、住友信託、メリルリンチ証券など12回の転職を経て、現在は楽天証券経済研究所客員研究員。獨協大学経済学部特任教授。「全面改訂 超簡単 お金の運用術」(朝日新書)など著書多数。