御嶽山の噴火で、気になるのが東日本の火山の活性化だ。スキー場や温泉などの観光地は火山の恩恵もあるが、危険も隣り合わせであることを忘れてはいけない。冬のスキーシーズンを控え東日本エリアの“危ない”遊び場に専門家が警鐘を鳴らす!
戦後最悪となった御嶽山(長野・岐阜)の火山災害で56人の死亡が確認されたのも記憶に新しい10月16日、富士山では初冠雪を観測するなど、いよいよ本格的な冬の到来を迎えつつある。
となると、湯煙が立ち上る温泉や、パウダースノーを満喫しながらのスキーが楽しめると胸躍らせる人も少なくないだろう。
だがちょっと待ってほしい。日本は言わずと知れた火山大国。御嶽山の噴火でにわかにその動向が気になるのが、東日本の火山活動の活発化だろう。ましてや、火山の近くで噴火に遭遇した場合、その危険率は格段に上がるという。
産業技術総合研究所の山元孝広総括研究主幹(地質学)が解説する。
「マグマが火口から噴出する『マグマ噴火』が起きた時に、その熱で雪が一瞬で溶け、大量の水が発生して重量が重くなり、『融雪型火山泥流』という現象が起きることがあります。土砂や岩石を巻き込みながら、ものすごい速さで流下していくので、その場にいたら助かるのは困難でしょう」
実際、1926年に十勝岳(北海道)で起きた噴火では、わずか25分間で山麓の富良野市街まで「融雪型火山泥流」が到達。85年には、コロンビアのネバドデルルイス火山の噴火で、雪や氷を溶かして発生から2時間半で100キロ以上離れた町を飲み込み、死者2万3000人の大災害になってしまったというのだ。
火山列島である日本でも、もはや“対岸の火事”で済まされる事態ではなさそうである。
武蔵野学院大学の島村英紀特任教授(地球物理学)は、“危ない”行楽地に、まず「蔵王温泉スキー場」などで知られる蔵王山(山形・宮城)をあげる。
「このところ火山活動が活発化しており、火山性地震が8月7日には1日に44回も観測されました。火山性地震が増えるということは、火山活動が盛んになっていることを意味するので、危険な数字と言えます」
仙台管区気象台による10月9日の発表では、火口湖「御釜」の水面で白く濁った部分が2カ所確認され、「新たな噴気口の発生や火山ガス、泥の噴出も考えられる」と注意を呼びかけているというから、甘く考えないほうが無難のようだ。
一方、青森の「八甲田スキー場」や国民保養温泉地第1号に指定された「酸ヶ湯温泉」が付近にある八甲田山では、過去5000年以内に7回の噴火活動が記録され、山郡では火山ガスが噴気。東日本大震災以降は、山がわずかに膨らむ地殻変動も観測され、火山性地震が散発しているだけに注意を要する。八甲田火山防災協議会では、
「『融雪型火山泥流』が起きれば、青森市の市街地まで押し寄せる」
と驚くべき警鐘を鳴らしているだけに、警戒が必要なのは言うまでもない。