堀田真由といえば、昨年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」での比奈(北条義時の正室)や、今年4月期放送の「風間公親-教場0-」(フジテレビ系)での伊上幸葉役が好評だった若手女優。すでにメジャー感が漂い始めている。
そんな彼女の魅力を堪能できる映画が、9月1日から全国公開される(青森県は8月25日~先行公開)。鶴岡慧子が監督した「バカ塗りの娘」(配給:ハピネットファントム・スタジオ)だ。
日本が誇る伝統工芸・津軽塗りを通して繋がる家族の絆を描いたもので、堀田の役柄は将来への不安や淡い恋心を抱きながら津軽塗り職人の父の跡を継ごうとする娘役。津軽の美しい風景を背景にして、家族と真摯に向き合う姿をたおやかに演じている。
映画は会話シーンがそれほど多くなく、静かな空間の中に作業音が流れていく。その音に聴き惚れてしまう。ちなみにタイトルにある「バカ塗り」とは津軽塗りを指す言葉で、塗っては研いで塗っては研いでを繰り返す「バカ丁寧」な作業ぶりから来ている。
印象に残る場面は多いが、なにより父親役の小林薫の手元を熱心に見つめる堀田の真剣な眼差しに引き込まれてしまう。いま、これだけ美しい目を持った女優はそうはいないのでは。もちろん役に成り切った演技も素晴らしい。
それを小林薫は「佇まいのいい人で、自然な演技をされる」と評しているが、まさにその通りだ。
いずれにせよ、大きな可能性を秘めた女優であることは間違いない。次にどんな姿を見せてくれるか楽しみだ。
(若月祐二)