名門・リバプールに移籍した遠藤航が、入団わずか2日目の公式戦でいきなりデビューを果たした。
8月19日のポーツマス戦、18日に入団発表をした遠藤はベンチ入りした。そして2-1とリードした58分、マック・アリスターが危険なタックルで1発退場。1人少なくなったリバプールは、その直後に3点目を決め、クロップ監督は63分にガクポに代えて遠藤を投入し逃げ切りを図った。
遠藤は、緊急出場にも関わらず無難なプレーを見せ、チームの勝利に貢献した。入団わずか2日目という短い時間で、これだけ安定したプレーを見せたことで、彼の獲得を不安視していたサポーターもひと安心したのではないか。
今季のリバプールは中盤がごっそり抜けた。ナビ・ケイタ、ミルナー、チェンバレン。特に、ブラジル代表のファビーニョ、主将のヘンダーソンが抜けた守備的なポジションの補強は急務だった。
当初はブライトンで三笘薫を後ろで支えていたエクアドル代表のカイセドの獲得に動き、100億円以上の移籍金を準備したがチェルシーにさらわれた。さらにベルギー代表のロメオ・ラビア獲得に動いたが、こちらもチェルシーとの争奪戦に敗れた。それが先週の初めの出来事。つまり、それまで噂にも名前が挙がっていなかった遠藤の補強は、緊急の出来事だった。
現に16日に正式にオファーが来た遠藤は「24時間で決めなければいけなかった」といっている。それだけリバプールはアンカーのポジションの補強が必要不可欠だった。
リバプールの攻撃陣は、モハメド・サラー、ルイス・ディアス、ディオゴ・ジョタ、ダルウィン・ヌニェス、コーディ・ガクポと他チームが羨むほどのメンバーが揃っている。その攻撃陣を支えるためにも守備能力の高いアンカーが必要だった。それが最終的に遠藤となったわけだ。
現在、アンカーはマック・アリスターが務めている。彼はブライトンで攻撃の中心になっていた。アルゼンチン代表でもインサイドセンターでプレーすることが多く、アンカーというよりも、もっと攻撃的なポジションの方が生きる。遠藤がアンカーに入り、彼が1枚前のポジションに入れば、チームの攻撃力はさらに上がるはずだ。
遠藤に求められることは、ボールを奪いきる強度の守備力と、最終ラインのカバーリング。ブンデスリーガの「デュエル王」としては十分にやれるし、それが彼の特徴でもある。リバプールの地元では「遠藤って誰?」「何者だ?」と言われているが、シュツットガルト出身のクロップ監督が、遠藤のプレースタイルを知らないわけがない。自分のサッカーが合っているからオファーを出したのだろう。
もちろんライバルは多いし、不甲斐ないプレーをすればベンチから外れる可能性もある。しかし、30歳という年齢で4年契約ともいわれる長期契約を結んだのは、それだけ期待されている証拠。
次節は27日、ニューカッスル戦。アンカーのマック・アリスターは出場停止。遠藤が先発出場する可能性もある。クロップがどういう使い方をするのか。注目したい。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。