大阪の指定暴力団「二代目東組二代目清勇会」の元会長。そんなプロフィールの男が出演する映画「DAIJOBU-ダイジョウブ-」の説明には「老師とヤクザの生死を巡る七年間の記録」とある。
無実の罪で22年もの獄中生活を経験し、2022年4月にヤクザ界から引退してカタギに。そんな川口和秀元会長が出会ったのは、伝説の禅僧・村上光照だった。禅の精神世界に憧れていた親分は、老師に師事しようとするが…。
2人の男の運命を追ったドキュメンタリーが、9月9日に公開された。いかにしてこの映画は作られたのか。川口元会長が独占インタビューに応じた。
――この映画(DAIJOBU)を撮り終わった時に、川口さんはどういった感想を持ちましたか。
川口 まぁ、撮られている方やから。こっちは撮られているだけやから、特にどうこうはないかな。
――撮影に入る前と撮影が終わった後で、自分の中で生き方に変化などは生じたでしょうか。
川口 いや、全くない。うん。何も変わってない。
――この映画を製作するするきっかけは何ですか。
川口 「ヤクザと憲法」(2015年に制作された、川口氏が登場するドキュメンタリー番組・映画)を見た人が来て、企画があるけど出演して頂けないかと。それで、かまへんよと。
――撮影期間が7年間もありましたが、その中で大変だったことは何でしょう。
川口 いや、ひとつもないよ(笑)。こういう役をせい、っていうんであれば、また考えなアカンやろうけども、素で撮ってもらってるから。
――では、印象に残っていることはありますか。
川口 いや、あの、内観(内省によって心の内の真理を観察し、自己を見つめる修行)に行った時は死ぬかと思ったね。
――その理由は?
川口 酒を飲まれへん(笑)。
――やはり内観の時はお酒を飲めませんか。
川口 飲んでもええんやろうけど、それやったら意味がないから。
――川口さんがよくおっしゃっている「ヤクザはやめたけど、男はやめてない」という言葉がとても印象的で…。
川口 ヤクザの前に男がある。ヤクザっていうのは生き方や。それで生き方を突き詰めていくと、武士道に繋がっていくんや。 映画「忠臣蔵」とかを見て熱くなるみたいな感覚があるやろ。ああいうんは武士道に通じるもんはあるやろな。映画いうんは、色々と作り上げていくもんや。ドキュメンタリーいうんは、セリフなしでもそのまま、その姿を映されているだけのことや。 そやから村上老師でも、中身がなかったら映像になれへん、と。
――そういう意味で言うと、村上老師は男でしたか。
川口 揚げ足を拾われへんかったね。そういう雰囲気を醸し出してる人やったな。突っ込むところがなかった。それくらいしか表現でけへんな。
――映画をこれから見ようと思っている方に、何か伝えるべきメッセージはありますか。
川口 まぁ、村上老師とわしの人間性を汲み取ってくれたらなと。何回も見ないとわからない箇所もあるから、できれば何回も見てもらいたいかな。これはメッセージというよりも願いやけど、この映画が評価されれば次の映画に繋がって、もっともっと社会貢献できると思っているから、力を貸してもらいたいってことやな。