7月20日の配信スタートから2カ月を待たずに全世界で1000万ダウンロードを突破したゲームアプリ「ポケモンスリープ」(以下、ポケスリ)。「ポケモン」と聞いて子供の遊びと侮るなかれ。健康志向の中高年の間で爆発的に広まっているというのだ。
「もう一軒行くか?」
「いや、ピカチュウと約束したんだ。22時までに寝るって」
「私も失敬。カビゴンの調子が気になってな」
街の酒場に行けば、オヤジ族のこんな会話が耳に入ってくるかもしれない。
40代のアサ芸記者がポケスリを知ったのは、同年代の居酒屋経営者からだった。
「お客さんの間で話題になっててさ。1週間の合計睡眠時間でマウントを取る人もいたよ。『オレはこんなに寝てるんだぞ』って」
どうやら、寝れば寝るほどゲームを有利に進められるようだ。それにしても、本当に睡眠時間が計測できるのか。そもそも何が楽しいのか。
まずは実践。スマホにポケスリをダウンロードし、生年月日などの基本情報を入力し、ピカチュウと約束する形で、毎日の就寝時間をセット。この〝約束の時間〟が近づくと、アプリがわざわざ知らせてくれるということか。ひとまず、カビゴンというタヌキのようなキャラクターの指示に従って眠ることにする。
ゲームを起動したまま、画面を下に向けて眠ればいいらしいのだが‥‥翌朝、画面を見ると、
《今日の睡眠時間5時間58分》と表示され、そのうち「ぐっすり(熟睡)の時間」は4時間11分だった。なお、「録音データ」の欄をタップすると、イビキや寝言が聞けるというのだが、再生すると、
「う‥‥うぐっ、んが!」
痰が絡んだようなイビキが確認できた。細かい遊び方はこれから覚えていくとして、こんなに手軽に自分の睡眠の質を計測できるとは、まったくの予想外だった。
ITジャーナリストの井上トシユキ氏が語る。
「今はアップルウォッチなどのウェアラブル端末には、睡眠アプリが標準で搭載されていますし、YouTubeでも睡眠を題材にしたコンテンツが人気を博しています。また、中高年の中には、16年リリースの『ポケモンGO』を子供と楽しんだ人も少なくないはず。ポケモンが睡眠に目をつけたのは、まさに先見の明アリと評価できます」
OECDの21年版調査では、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で最下位。ポケスリの普及で汚名返上なるか。