こんなユニークな制度を取り入れたのは東京都墨田区に本社を置く株式会社CRAZY。“世界で最も人生を祝う企業”というビジョンを掲げてオーダーメードのウエディング事業を展開している。社員数は1400人を超え、年間15億円ほどの売り上げがある会社なのだ。この制度の導入理由を森山和彦社長はこう言っている。
「企業が睡眠に関与できるという1つの事例をもって、1つの幸せな働き方を作っていきたい」
制度の中身はこうだ。社員はエアウィーヴ社の睡眠時間計測アプリで睡眠時間を計測。するとこのデータが蓄積されて会社に届く仕組み。1カ月間毎日計測すると1000ポイントがもらえる。皆勤賞だ。そしてさらに1週間のうち6時間を超える睡眠をとった日が5日間以上あれば500ポイント、6日で600ポイント、7日で1000ポイントがもらえる。このポイントは1ポイントにつき1円の計算で、社内の食堂やカフェで使用できるのだ。「最大で年間6万4000円分のポイントが得られる」(森山和彦社長)
そう言えば、確かにこの6時間という睡眠時間にも意味があった。スポーツインストラクターの大川香織さんはこう言う。
「睡眠時間は10代で8時間、20代には7時間、40代で6.5時間、60代で6時間と、年齢が上がれば減る傾向にあるし、日中の活動量によっても必要な睡眠時間は変わりますが、6時間を切ると睡眠不足と感じる人は多い。かといって長く寝ればいいというものでもないんです。“眠りすぎ”の人も、死亡率が高まるという調査も発表されています」
6時間という睡眠時間はこんなところから導き出された数字なのだ。
寝るだけなら誰でも簡単にできそうだし、社員のモチベーションも上がろうというもの。そして企業側としても“睡眠時間を計測し可視化することで、社員の生活習慣の改善と健康促進、生産性の向上を狙う”というから、一石二鳥か。管理すべきは労働ではなく社員の健康だ、という精神が普及していけば社会も個人の生活も好転していくかも。
(谷川渓)