テリー でもそんな中、同世代の吉田拓郎さんは音楽活動から引退しちゃいましたし、井上陽水さんも最近活動してないですね。
泉谷 そうなんだよ。わかるけど、俺からすると「何、怠けてるんだ」だよね。
テリー 何、勝手にやめてるんだと。
泉谷 そう。ハッキリ言えば俺たちは狂ってるわけじゃない。
テリー 狂ってる?
泉谷 化け物だっていうことですよ。歌でも何でもすごいものを残してきたわけだし、ライブで大勢を熱狂させてきたわけでしょう。熱狂させてる人っていうのは化け物なんですよ。化け物が体調不良とか、人間的な弱さでやめていいのかと。
テリー どういう理由ならやめていいんですか。
泉谷 例えばね、ライブの現場で、「声出なくなった、俺はもうダメだ!」って、やめるんならいいよ。
テリー 正直に言えばいい。
泉谷 そうだよ。調子悪けりゃ「調子悪い」って言えばいいし、年齢的に衰えてきたら「前のようには声出ないけど我慢しろ」って言えばいいんだよ。「だから、金ちょっと返す」みたいなさ。
テリー 泉谷さんは声は?
泉谷 俺の場合は元からいい声で歌ってるわけじゃないんで(笑)。いい声を出そうっていう気もないし、みんなガラガラ声でも、「おお、そうか」って納得してるけどね。
テリー 得なキャラクターですよね。
泉谷 自分が化け物を目指すという意識を持って、自分の弱さとちゃんと戦えばいいんですよ。俺なんて臆病だから、声が出なくなったり、体力がなくなったらマズいから、酒もタバコもやめたんで。鍛えるっていうことは、弱っちいから鍛えるんですよ。
テリー なるほど。それでタバコやめた?
泉谷 そう。タバコとか吸ってライブやったら、途中で具合悪くなっちゃったんだよ(笑)。
テリー 泉谷さんって世間的なイメージと違って、すごくナイーブだし、繊細じゃないですか。当然、精神的に落ち込むこともあると思うんですけど、そういう時ってどうしてるんですか。
泉谷 だけど、自分の弱さは感じてないとダメですよ。だから強くあろうとするんであってさ。俺だって家のカギは失くしちゃうし、携帯は落とすし、普通の生活もできないぐらい、ヒドいもんですよ。
テリー 僕もモノをほんとに忘れますよ。
泉谷 そうでしょう。でも、それを「あ、ダメだな」と思ってるのは、とても健全なことなんですよ。
テリー 泉谷さん、歌詞なんかは覚えられるの?
泉谷 覚えられないね。覚えたこともないし。
テリー ダメじゃないですか(笑)。「春夏秋冬」は覚えてるんでしょう?
泉谷 ギリギリだな(笑)。あれ以外に、あと5、6曲覚えてればいいとこだよ。
テリー 覚えてなくて、困らないんですか。
泉谷 困らないよ。今はプロンプターがあるし、昔から歌詞は床に貼ってるからね。
テリー ずるいなぁ。
泉谷 この間なんかウケたよ。歌詞見てるのに、間違えたからね(笑)。
テリー アハハハハ。忌野清志郎さんって歌詞見てなかったですよね。
泉谷 見てないよ。あいつは練習量が違うから。
テリー あ、そうなんだ。
泉谷 でも、これはあくまでも言い訳と屁理屈だけど。覚えたことは1回忘れて、新鮮な気持ちでそれに向かわないと。練習でやったことをそのまま見せてどうするんだっていうさ。だから、歌詞なんか覚えたってしょうがないんですよ。
ゲスト:泉谷しげる(いずみや・しげる)1948年、青森県生まれ。1971年、アルバム「泉谷しげる登場」でデビュー。翌年のシングル「春夏秋冬」が大ヒット。2013年にはNHK紅白歌合戦に初出場した。俳優としても「土曜ワイド劇場『戦後最大の誘拐・吉展ちゃん事件』」(テレビ朝日系)、「金曜日の妻たちへ」「ケイゾク」(以上TBS系)、「Dr.コト-診療所」(フジテレビ系)など多くのドラマ・映画に出演。また「北海道南西沖地震」「長崎・雲仙普賢岳噴火災害」「阪神・淡路大震災」「東日本大震災」などの際に行ったチャリティ活動はライフワークに。現在「泉谷しげる全力ソロライブ90分」を全国のライブハウスで敢行中。