本誌連載でおなじみの泉谷しげるが自身初となる(?)CDアルバムをプロデュース。なんと10人もの歌姫と昭和の名曲をデュエットしている。その1人に指名されたのは、演歌の女王・八代亜紀。野獣に見初められた美女の運命やいかに!?
──今回のアルバム発売のきっかけは?
泉谷 レコード会社からそういう企画が上がってきたからだよね。“泉谷しげるが昭和の名曲をさまざまな女性アーティストとデュエットする”みたいなさ。でもオレ、最初断ってたの。つまんねー企画だなと思って(笑)。
八代 そうなんですか?
泉谷 うん。だって、自分はもともとフォークとかロックというメジャーじゃない、いわゆるサブカルチャー的なところで、ずっとやってきてるからさ。昭和の歴史を背負ってる気もないし、いまさら背負わされるのもイヤで。だから1人の歌手としてじゃなく、プロデューサーとしてだったら引き受けてもいいと返事をしたんだ。で、どうせなら絶対に出てくれないような大物女性アーティストを呼んでやれと。そうすればみんなに断られて、企画自体がポシャるんじゃないかと踏んでたら、八代さんが出てくれるって言うから弱っちゃった(笑)。
八代 私は最初からすごくおもしろい企画だと思いましたけどね。泉谷さんって私とは全然違う世界の大御所だから。そういうコラボってあんまりないし、きっといい作品ができるんじゃないかなって。
──おふたりの初対面はいつ?
泉谷 いつだっけ? 何年か前にCSか何かの番組に出てもらったのが初めてじゃないかなぁ。
八代 そうです。ゲストに呼んでいただいて。
泉谷 ちょうど八代さんが絵の方面でも有名になり始めた頃で、その時もどうせ出てくれないだろうと思って打診したら出てくれたんだよ。
──オファーのしかたが今回と同じですね(笑)。
泉谷 でも、やっぱり八代さんはアーティストとして幅広いよね。昔からただの演歌師じゃないと思ってたけど。演歌の枠だけにとどまらない‥‥まあヘンな人だよね。ハッキリ言って世間を見てないでしょ?
八代 はい(笑)、世間には疎いかもしれません。でも、泉谷さんも同じでしょ? この(対談場所の)ビルの入り方もわからなかった(笑)。(編集部注:セキュリティのため、電子カードをかざして入館するビルだった)
泉谷 ワハハハ! わからないね、最新の建物とかホントに。ちなみに八代さんはケータイ持ってるの?
八代 持ってないです。
泉谷 そうなんだ!? じゃあ、スマホなんかとんでもない?
八代 とんでもないです。でもね、持たないからこそ感じることもあって。最近、電話がかかってくると画面で相手を確認して「この人都合が悪いな」「今、この人と話したくないな」と思ったら出ないじゃないですか。それって昔はありえなくて、電話に出るまで相手が誰だかわからなかったし出たら相手が誰でも話さなきゃならなかったでしょ? でも、そのほうがコミュニケーションとしては当然で、最近は人間関係がすごく怖いなと思いますね。