──八代さんとのデュエット曲に「夜につまずき」を選んだ理由は?
泉谷 これは(所属事務所の社長でもある)八代さんの旦那と相談して決めたんだよね。さっきも言ったけど八代さんは世間を気にしないから(笑)、旦那さんに全て任せてるところがあって、そこがおもしろいんだけどさ。八代さんにとっての“世間の目”が旦那さんなんでしょ?
八代 そうです(笑)。
泉谷 で、最初は来生たかおと桃井かおりの「ねじれたハートで」ってデュエットソングがあって、それはどうだろうって打診したんですよ。そうしたら「それを八代に歌わせても、普通になってしまう」と。すごくいい意見だと思って感心したんだけど。
八代 彼は「泉谷さんの男っぽい、自由人な感じを八代が歌ったらどうなるかな」って言ってましたね。
泉谷 それで、じゃあ、こういう曲もあるけどって持って行ったのが「夜につまずき」で。オレが作曲したらしいんだけど「こんな曲あったっけ?」って。完全に忘れてた(笑)。
──作詞はビートたけしさんです。
八代 最初聴いた時は「おじさんたちってこういう思いだったんだ?」ってショックでしたね。恋愛して、結婚して、子供ができて、おじさんたちはみんな幸せだと思ってましたから。それが“夢はあるけど、家に帰る電車の窓に自分の顔が映った時、その夢から醒める”みたいな歌詞に、どこか放り投げ出すようなメロディでしょ?
泉谷 男って嫉妬深くて、誇大妄想だからね。みんなの前では夢を語るし、オレは他人とは違うんだゾって言いたいんだけど、帰る頃には自分の力のなさを実感してうちひしがれたりしてさ。
八代 へぇー。
泉谷 男同士のヤキモチや対立心って半端じゃないから、そのぐらいのことを外で言ってないと潰れちゃうんだろうね。
──八代さんはこういうロック調の曲は‥‥。
八代 初めてです。ロックも初めてだし、こんな男っぽいのも初めて。「舟唄」みたいな男の曲はありましたけど。だからレコーディングの時は「私の歌い方にどんどん注文をつけてください」って泉谷さんに言ったんです。
泉谷 またオレと旦那がヒドいんだよ。「もっとヘタクソに歌え!」とか。今考えたらよく怒られなかったなと(笑)。ごめんなさいホント!
八代 いえ全然。こんなこと言ってますけど、現場ではすごく優しいんですよ。(丁寧な声で)「ご自由にお願いします」みたいな(笑)。
泉谷 そうだった?「ここはもっとまっすぐな気分で歌ってくれ」とか結構、注文つけたハズなんだけどなぁ。聞いてないんじゃないの?
八代 聞いてましたよ! あれ? 聞こえてなかったのかな(笑)。