政治

「ふるさと納税」10月改定に忍び寄る「ステルス増税」にダマされるな

 9月25日の会見で「経済成長の成果である税収増などを、国民に適切に還元する」と語った岸田文雄総理だが、これに騙されてはいけない。納税者が気付かない「ステルス増税」が間近に迫っているからだ。

 2008年に始まった「ふるさと納税」制度が、10月から大きく変わる。1万円以下の返礼品の品目が減り、英アラジン社の家電や、国産タオルとダイソンの家電セットといったオシャレな返礼品も姿を消すという。ふるさと納税の「5割ルール」と「産地」が厳罰化され、返礼品や送料などの経費を寄付額で割った経費率が5割を超えると、ふるさと納税制度から除外されてしまうからだ。

 今までなら5000円や3000円のお手軽な納税額でもみかん5キロ入り一箱、焼肉セット、ハムソーセージセットなど、十分に満足できる返礼品をもらえた。だがガソリン高騰やワンストップ制度の書類送付などで経費がかさむ上に、経費率を5割以下に抑えるため、納税金額の2分の1以下からさらに送料などを差し引いた時価分の返礼品しか受け取れなくなる。1万円以下の返礼品の取り扱いが減り、おのずと納税額は増えてしまう。

 他に納税した同一県内の肉や米でないとダメ、県外や国外の商品、製品の時価が3割を超えてはダメという縛りもできたが、「ふるさと納税」の主旨を考えれば、そのあたりの縛りは致し方ないと言えるだろう。

 すでに「ふるさと納税」ポータルサイトには内容量と「価格改定」された返礼品が並び始めた。米や野菜、フルーツは納税額が2倍になったが、内容量は2倍+α増量の大サービス。生産者から「市場では売り物にならない規格外のフルーツや野菜」などのオマケもついて、お得感満載だ。一方で肉系は内容量が減り、「ステルス増税」を実感する。

 9月24日の「サンデー・ジャポン」(TBS系)では、杉村太蔵が「駆け込みふるさと納税」について解説した。ゲストのマルクス主義研究者・斎藤幸平氏が、

「左翼は有名人や金持ちがふるさと納税するのを批判している。金持ちしか豊かにならない」

 と水を差したが、その点、VTR出演した自衛隊芸人・やす子は強かった。

「全部質がいいから、選択し続けてるところがある」

 布団から家電、家具、さらにはウェットティッシュなどの消耗品まで、ふるさと納税で賄っていると告白したのだ。税金を納めた上で返礼品でつましい生活をしているのに、外野から文句を言われる筋合いはないだろう。

 もちろん返礼品に目が眩むことなく、ふるさと納税の使いみちをチェックすることは重要だ。

 宮崎県川南町はそれまで前町長が「ふるさと納税を財源に、南海トラフ地震に耐えうる中学校の新設工事に充てる」と公約していたのに、町を二分する今春の町長選挙の結果、校舎新設反対派が当選。「校舎なんて改修で済む。老人のための温泉施設や貧困老人に金を配る」(議事録要旨)と、絵に書いたようなシルバー民主主義の暴走で、ふるさと納税の使いみちがひっくり返ってしまった。せっかく税金を納めるからには使いみちについて「市長にお任せ」「町長、村長にお任せ」にせず、納得のいく使われ方を指定しよう。

(那須優子)

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