政治の世界で「影の総理」という言葉を聞くことがあるが、永田町では岸田文雄総理以上の「実力者」として、ラーム・エマニュエル駐日米大使を挙げる声がある。米バイデン大統領とのホットランは太く、今回の内閣改造にも深く関与しているといわれている。野党のベテラン秘書が明かす。
「特に岸田総理の外交政策はアメリカ政府というより、エマニュエル大使の手のひらの上で踊っている印象です」
エマニュエル大使は近ごろ、アメリカ本国とトラブルを起こしている。米NBCテレビは9月20日、アメリカは大使にSNSで中国を挑発するような投稿を自粛するよう求めた、と報じた。アメリカが米中首脳会談を模索する中、障害になると考えたからだ。
大使は中国の国防相や外相らが相次いで消息を絶ったことについて〈習近平政権はアガサ・クリスティの小説「そして誰もいなくなった」のようになっている〉と書き込んだ。しかしエマニュエル大使は「警告」など意に介さず、9月22日にも〈中国は日本産の水産物を輸入禁止としたが、その発表後の9月15日には、日本沿岸で操業を行う中国漁船が同じ海域で再び漁を行っている〉とSNSで発信。日本の海産物輸入を止めておいて、日本近海で漁をすることが矛盾している、と主張したのだ。大使の言い分はもっともだが、先のベテラン秘書は、
「アメリカのアジア政策は自分が決める。バイデン大統領は黙っていろ、と思っているのではないでしょうか」
その剛腕ぶりから「ランボー」の異名を持つエマニュエル大使は2022年1月に来日後、今年5月のG7広島サミットまでにLGBT関連法案の成立を求めるなど、細かいことまで岸田政権に注文をつけた。そして岸田政権は、それに従順に対応してきた。
今回の内閣改造・党人事でも、ランボーの影が見えた。岸田政権と大使との連絡役は木原誠二前官房副長官で、木原氏は今回の人事で幹事長代理と政調会長特別補佐を兼任するという「異例の出世」を果たした。エマニュエル大使はアメリカ経由以外の日本独自の外交ルートを嫌がっており、中国に独自人脈を持つ林芳正氏の外相交代にも、エマニュエル大使の意向があったとされる。
安倍外交が築いてきたロシアなどとの独自外交ルートは潰された。ウクライナ支援、防衛費予算の増額、そして旧統一教会の解散権行使の問題も、
「統一教会自体がアメリカに独自の人脈があることから、大使が最終決定権を持っているといわれています。国民の税金をランボーが使い放題ですよ」
そう言って、野党の若手議員はボヤくことしきりなのだった。
(健田ミナミ)