50ドル(約7000円)で買ったとする使い古された椅子が、世界に50脚しかない激レア品だったら…。
そんな掘り出し物がサザビーズのオークションで、なんと10万8000ドル(約1520万円)で落札され、大きな話題になったのは今年7月だった。
出品したのは人気TikTokerのジャスティン・ミラーという男性。この椅子はデンマークの伝説的なデザイナー、フリッツ・ヘニングセンが手がけたものである可能性が高く、現存しているとすれば、わずか50脚のうちの1脚になる。過去には10万ドル(約1400万円)の高値が付いたこともあり、今回はそれを上回る金額で落札された。出品者は手数料を差し引いた8万5000ドル(約1200万円)を手にしたという。
まさに本人も驚く「幻の椅子」だったわけだが、一方では、絶対に手にしたくない「幻の椅子」もある。それがイギリスのサースク博物館で、座ることができないように天井から吊り下げられた状態で保管されている「バズビーズ・チェア」である。「亡霊に取り憑かれた椅子」と呼ばれるこの物騒な品物について、世界の超常現象に詳しい研究家が解説する。
「この椅子はイギリスのノースヨークシャーのパブに置かれていたもので、トーマス・バズビーという酒好きな男が連日の飲みに行き、その椅子に座っていました」
そして1702年のある日のこと。バズビーが義父を連れてパブを訪れると、たまたま義父がその椅子に座ってしまい、大喧嘩に。仲裁によっていったんは収まったものの、夜になって再び憤怒がぶり返したバズビーは農場へ向かい、こともあろうに、義父を殺害してしまったという。
バズビーは逮捕後、処刑されることになったが、絞首台に向かう途中、「最後の願い」として、行きつけのパブに立ち寄ることを許された。
「そこで彼が椅子に腰かけると『この椅子に座った者は祟られてすぐに死ぬ』と大声で叫び、絞首台に上がったとされています。実際にバズビーの処刑以降、この椅子に腰掛けた63人が次々に事故死する現象が発生。バズビーの亡霊による祟りだ、という噂が広がりました」(前出・超常現象に詳しい研究家)
その後、パブのオーナーも幾度か代がわりし、椅子は地下室にしまい込まれ、数年間そのまま捨て置かれていた。
ところが、だ。あるオーナーがレンガ職人に地下の修理を依頼。その際、職人がその椅子に座って休憩すると、ほどなくして職人は急死したという。超常現象に詳しい研究家がさらに続ける。
「そこでパブのオーナーはサースク博物館に、椅子を引き取ってくれないかと相談した。結局、博物館で厳重に管理することになったというのが、バズビーズ・チェア伝説なのです」
この椅子は博物館の床から2メートルの高さに吊り下げられた。スタッフさえ触ることができない状態で展示されているというが、数々の死は本当にバズビーズ・チェアの呪いによるものなのか…。
(ジョン・ドゥ)