昨年7月8日、安倍晋三元総理が凶弾に斃れた事件に端を発し、旧統一教会の悪事が改めて浮き彫りになった。現状、いよいよ同団体への「解散命令」が進んでいるようにも見える。ところが聞こえてくるのは、「一件落着」とはほど遠い真逆の状況ばかりで‥‥。
「旧統一教会(世界平和統一家庭連合)は財産や大切なもの、人生そのものを奪ってきた。詐欺師以上の詐欺師だ。何とか解散命令請求を出してほしい」
旧統一教会に入信した元妻が教団から法外な金額の壺や印鑑、高麗人参などを購入、多額の献金もたびたび強要され続けた結果、被害総額は1億円以上。さらに3年前には長男が焼身自殺‥‥。
「教団により人生と家庭が崩壊した」と実名で被害を訴え続けている橋田達夫さんは、去る7月11日、立憲民主党などの野党合同により行われた旧統一教会の問題を巡るヒアリングの席で、涙ながらにこう訴えるのだった。
昨年7月、山上徹也被告(43)により選挙応援演説中の安倍晋三元総理が銃撃されて絶命した事件。世間に大きなインパクトを与えた事件の犯行理由として、山上被告本人が「旧統一教会への恨み」だったと供述した。結果、冒頭の橋田さんをはじめ信者の家族を不幸のどん底に陥れた、同教団による悪質極まりない霊感商法の数々が炙り出されたことは周知の通りである。
旧統一教会の解散命令請求は、日本全国にいる数多の被害者、全国霊感商法対策弁護士連絡会(以下、全国弁連)などの支援者たちが長年にわたり切望する総意だったが、なかなか進展することはなかった。しかし先の経緯を辿り、にわかに現実味を帯びてきたのだ。「やや日刊カルト新聞」主筆でジャーナリストの鈴木エイト氏が解説する。
「宗教法人に対して解散命令請求が出た事例は、これまでにオウム真理教、明覚寺、大日山法華経寺のわずか3件のみ。それだけに文化庁は、旧統一教会の霊感商法の実態など、解散命令請求の要件を満たすための客観的な証拠集めにあたり、全国弁連とも連携。全国の被害者たちからヒアリングを行う一方、教団側に提示を求めても出してこないであろう、教団にとって不利になるような内部資料・情報も集めていたようです。つまり、裁判所に請求を申し立てた際に、確実に解散命令が確定するレベルまで、精度の高い情報を収集してきたということです」
今後の流れとしては、文化庁は10月12日に宗教法人審議会を開き、そこで最終的な判断を下し、その後、東京地裁に解散命令請求を申し立てる方向で調整が進んでいるという。
「解散命令請求を巡る審理は、非訟事件なので非公開で行われますが、当然、旧統一教会は東京地裁の決定を不服として、即時抗告してくるはずです。そのため、高裁で同様の審理が行われることになります。つまり、旧統一教会からすると不服であれば、高裁、最高裁へと抗告できるので、解散命令が高裁の決定で確定するのは早くても半年後、1年程度はかかると思います」(鈴木氏)
「解散命令」にこぎつけるまでには、まだまだ時間が必要なようだ。