まさに火中に身を投じることに――。楽天イーグルスの来季新監督に今江敏晃打撃コーチが正式に昇格した。森井誠之球団社長は「風通しのよさを重視する。1軍、2軍の連係が必要」と新監督像についてコメントしていた。そうした上層部の意向を踏まえ、育成コーチや2軍コーチを歴任した今江コーチが選定された。
「低迷期にある楽天ですが、来年も戦力が整う見通しは立っておらず、今江監督は苦闘を強いられそうです。抑えの松井裕樹はFAでメジャーリーグ移籍が濃厚。楽天モバイルの赤字が親会社の利益を食い潰していて、野球にカネを使う余裕はなく、補強どころではない状況です。若手を鍛え上げて底上げしなければならない。主力は高年齢化が進み、今江監督は来季以降、ベテランに引導を渡す役目も引き受けなければなりません」(仙台メディア関係者)
石井一久前監督はGM時代から次々と監督のクビをすげ替え、ついには自ら指揮官となってベテラン王国を作ったが、成績はふるわず。退任後は球団取締役シニアディレクターに就任。球団関係者が言う。
「石井さんはああ見えて、上にとても従順なタイプ。だから三木谷浩史オーナーと親しく、球団名誉職に横滑りできた形です。鶴の一声を正確に反映する手腕が、球団内で評価されていたということでしょう。逆に石井さんに対し、意見を言ってたてつく平石洋介(現・西武ヘッドコーチ)や嶋基宏(現・ヤクルトバッテリーコーチ兼作戦補佐)を排除する冷酷な性格から、下からはあまり慕われていませんでした。仙台ではそのあたりを見透かされてファン離れ、スポンサー離れが進んでいました」(前出・仙台メディア関係者)
2013年から優勝が遠ざかっているイーグルス。就任会見で、今江新監督はこう言った。
「結果はもちろんだけど、結果を出すだけじゃなくて、ファンの方との交流もやりながら、負けてもまた球場に来たいなと思ってもらえるようなチームにしたい」
その上で、強い意気込みを語っている。
「やるからには頂点を目指したい。監督、コーチ、スタッフ、球団職員の方々、チアも、球場整備の人もそう、売り子の人もそう。関わる全ての人がひとつにならないと、そこの景色は見えない。東日本大震災を乗り越えて、2013年に日本一になった。東北の勢いを凄く感じた。あの時の興奮と感動をもう一度、味わってもらいたい」
再び栄冠は訪れるか。新指揮官の立て直しにかかっている。
(田中実)